「熱海五郎一座」の新橋演舞場シリーズ第12弾が今年も開幕!タイトルは、東京喜劇『仁義なきストライク ~弾かれた栄光と約束のテンフレーム~』。
“助っ人”のビビる大木さん、ゲストの沢口靖子さんととともに一座に新風をもたらすのは、一座のファンを10年前から公言してきた野呂佳代さん。座長の三宅裕司さんとともに、作品への思いを伺いました。
(左から)三宅裕司さん、野呂佳代さん
ベテランたちが全力でやる「バカだね~!」が大好き!
――本日はよろしくお願いします。野呂さんはもともと熱海五郎一座のファンだということですが、まずは今回のオファーを受けての率直な思いをお聞かせください。
野呂 はい。過去に東MAX(東貴博)さんとレギュラー番組をご一緒していた頃にお誘いいただいたのがきっかけで「熱海五郎一座」を知り、それから10年近くずっと観させていただいています。ミュージカルなど舞台作品はいろいろと好きなのですが、こんなに長く観続けている舞台は他にないですね。
三宅 そう言ってもらえると嬉しいですね。
――そこまで惹かれる理由はどんなところでしょうか?
野呂 まず、一座のみなさんがおっしゃっている「東京喜劇」というものがすごく好きです。ベテランのすごい方たちが、真剣に「バカだね~!」(もちろん素晴らしいという意味で言っています!)ということを表現していて。泣ける部分があったり、いろいろなところに小ボケが散りばめられていたり……。「いつかオファーが来たらいいな」という気持ちをずっと抱いていました。数年前に(AKB48の)後輩の横山由依ちゃんが出演したご縁もあって、今回のお話をいただけたのかなと思うと感慨深いです。私の家族も「バカだね〜!」というのをテーマに生きてきたところがあるので(笑)、私の出演には家族も大喜びです。ファンがそのまま舞台に出られるようになった、という感覚ですね。
――三宅さんは、世代を問わず、みんながわかる「笑い」を追求されていますよね。
三宅 そうですね。最近は芸人さんたちが作る笑いもわかりにくくなっている気がしますが、一方でそれが大好きという人たちもいます。笑いが多様化している時代ですよね。それでも僕たちは、小学生からおじいちゃん、おばあちゃんまでが一緒に笑える「わかりやすい笑い」を創っていきたいと思っています。僕たちが目指すのは、ストーリーがしっかりあって、設定が面白くて、きちっと演技をすることで生まれる笑い。野呂さんのお話を聞いていると、それがしっかり伝わっていたんだなと感じますね。
――今回、野呂さんをゲストに呼ばれた決め手は何だったのでしょうか?
三宅 まずご本人が出たいとおっしゃっていること、こういう笑いが好きというのは大きいですよね。それから、今の(テレビの)バラエティって大変でしょう?短い時間で反応して、いかに面白いリアクションができるか。何秒も考えたら遅いと言われるような世界でうまく対応している、その「頭の回転の速さ」も魅力でした。それと同時に、ドラマでもきちっと演技をされているので、「演じる」ということも分かっているんだろうなと。その両方ですね。
野呂 両方できたらいいなと思っているので、頑張ってやってはいます。
舞台は「ボウリング業界」座長の最高スコアは230以上!?
――三宅さんは、「一座の笑いは設定が全て」とおっしゃっていますが、今回の「ボウリング」というテーマ、設定はどんなところから生まれたのでしょうか。
三宅 僕たちは設定をじっくり創るのですが、稽古で創り込んだように見せないのが「熱海五郎一座」ですね。その場の瞬発力やアドリブで言っているように見せることで、お客さんが感じるおかしみが大きくなります。とはいえ、もう何年もやっていますから、正直設定は出尽くした感もあり…それでも今回、作家が絞り出してきたテーマが「ボウリング業界」でした。プロボウラーとスポンサーの関係とか、老朽化したボウリング場の再開発とか。落ちぶれたプロボウラーがその後どうしていくのかといった人間模様を、面白おかしくストーリーにしています。
――おふたりはボウリングへの思い入れはありますか?
三宅 僕は世代的に大ブームの頃が学生でしたから。早朝ボウリングだと1ゲーム100円くらいで安かったですね。50年以上前ですけど、当時は一生懸命やって、最高スコアは230……。
野呂 えー、すごい! めちゃくちゃすごいです!
三宅 その時はなぜか5回連続でストライクが出たんですよ。でもその後はずっとやっていなくて。今はそもそもボールが持てないですよ、15ポンドとか重いですから(笑)。
野呂 (笑)。 私は子どもの頃、家のすぐ近くにボウリング場があったので、遊びといえばボウリングかカラオケでした。でも近所になくなってからは2〜3年に1回、ノリで行くくらいになっちゃいましたね。
三宅 でも、チラシのポーズを見れば「あ、これやってるな」って分かるよね(笑)。
野呂 あはは、好きではあります(笑)。チラシ撮影で他の出演者の皆さんが(ボウリングの)ピンになるだけでもワクワクして。「バカだねー!」な要素とこのテーマが組み合わさるのが楽しみです。今は撮影中のドラマを無事に終わらせて、早く稽古に行けるようにするのが日々のモチベになっています。
三宅 モチベ(笑)!
野呂 モチベーションです、略さないほうがよかったですか?(笑)。略すとちょっとズルくなっちゃう…。
三宅 いやいや、いいんです(笑)。
「喜劇」は楽しい稽古場と「人柄」から生まれる
――野呂さんは他のお仕事との関係で少し遅れての参加になりそうですが、普段の「熱海五郎一座」の稽古場の雰囲気はいかがですか?
三宅 楽しいですよ。喜劇ですから。稽古場の楽しい雰囲気は舞台上にも出ます。そうじゃないとこんなバカなことはできません。灰皿を投げて稽古してたらこういうものはできないですよ(笑)。役者さんの得意な表現で笑わせるほうが伝わるので、無理に型にはめるより、なるべくその人に寄り添うようにしています。野呂さんの分も、代役をしっかりと決めて動きを固めておきますので、参加されたらすぐにお伝えできるようにしておきますよ。
野呂 ありがたいです……。
――今回はビビる大木さん、沢口靖子さんも加わって新しい風が吹き込みますね。
三宅 これだけ長い間やっていると一座のメンバーもマンネリ化しますから。「リーダー(渡辺正行)がまた同じことやってるよ」「あーこれやると思った!」みたいな(笑)。でも新しい人がいるだけでまったく違う風が入ります。歌やダンスはレベルを高く、バカな部分は真剣にバカをやる。その落差を今回も大事にしたいですね。それが「東京喜劇」だと思っています。
――それでも、誰でも出られるというわけではないですよね。
三宅 そうですね。まずはこの笑いが好きなこと、それからスキルも必要ですが、僕は「人柄」が大事だと思っています。人柄が良くないと、お客さんは笑わないんです。「この人、面白いけどあまり好きじゃない」という人のこと、声を出して笑うのは難しいんですよ。その役者さんが人柄のいい役者さんなら好きになる、だから声を出して笑えるテンションになるんです。「人柄」の基準は……リーダー(渡辺)ですかね。彼はね、僕が「大っ嫌い!」と思うような笑わせ方をすることもあるんですけど(笑)、彼が一生懸命やるとちゃんとお客さんにウケるんですよ。あの人は人に愛されている、そこはすごいなと思っています。
カーテンコールで感じる「本物の拍手」を味わってほしい
――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
野呂 私にとって大好きなところで勉強できる期間は、絶対に幸せに感じるはずです。もちろん難しいこともあると思うのですが、そこまで楽しんで頑張りたいです。舞台は自分を表現するのを生で観てもらう場所。稽古で皆さんと仲良くなって、素敵な状態で観に来てくれる人を笑わせたいです。自分からエネルギーを放出していきたいですね。
三宅 毎年、最高傑作を目指しています。カーテンコールでお客さんが送ってくれる拍手が、義理なのか、本当に「よかった!」という拍手なのかは、舞台の上で如実に分かるんですよ。野呂さんにはぜひ、その感動を味わってほしいですね。
野呂 いつも客席から笑顔をもらっていた側なので、今度は与える側として頑張ります!
(取材・文/小川聖子)
(撮影/藤本聡太)