ストーリー
1984年、炭鉱労働者たちのストライキに揺れる、イギリス北部の町ダーラム。
主人公ビリーは、炭鉱労働者の父と兄、祖母の4 人暮らし。
幼い頃に母親は他界してしまい、父と兄はより良い労働条件を勝ち得ようとストライキに参加しているため、収入がなく生活は厳しい。
父はビリーに逞しく育って欲しいと、乏しい家計からお金を工面し、ビリーにボクシングを習わせるが、ある日、バレエ教室のレッスンを偶然目にし、心を奪われたビリーは、少女達と共にレッスンに参加するようになる。
ボクシングの月謝を使って家族に内緒でバレエ教室に通っていたが、その事を父親が知り大激怒。
バレエを辞めさせられてしまう。
しかし、踊っているときだけはツライことも忘れて夢中になれるビリーは、ダンサーになるという夢を捨てられない。
そんなビリーの才能を見出したウィルキンソン夫人は、彼の夢を叶えたい一心で、まるで我が子のようにバレエを無料で特訓をし、イギリスの名門「ロイヤル・バレエスクール」の受験を一緒に目指す。
一方、男手一つで息子を育ててきた父は、男は逞しく育つべきだとバレエを強く反対していたが、ある晩ビリーが一人踊っている姿を見る。それは今まで見たことの無い息子の姿だった。
ビリーの溢れる情熱と才能、そしてバレエダンサーになる という強い思いを知り、父として何とか夢を叶えてやりたい、自分とは違う世界を見せてやりたい、と決心する。
11歳の少年が夢に向かって突き進む姿、家族との軋轢、亡き母親への想い、祖母の温かい応援。
度重なる苦難を乗り越えながら、ビリーの夢は家族全員の夢となり、やがて街全体の夢となっていく・・・
インタビュー
汗や息づかいをリアルに感じる、葛藤や愛情に共感できる作品です。
女優 安蘭けいさん
映画「ロケットマン」「キャッツ」の脚本・歌詞を手がけるリー・ホール×映画「リトル・ダンサー」で監督を務めたスティーヴン・ダルドリー×ミュージカル『ライオンキング』の音楽を手掛けたエルトン・ジョンと最高のクリエーターが生み出し、日本でも再演されるミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』。今回、新キャストとして重要な役どころを担い、得意のダンスにも意欲的な安蘭けいさんに、本作にかける思いや役づくり、見どころなどをお聞きしました。
――作品のお話があった時、どのようなお気持ちでしたか。
率直に嬉しかったですね。この作品はニューヨークだけでなく、日本での初演も観たことがあったので、オーディションのお話をいただいた時から「来たな」という手応えがありました。私が演じるウィルキンソン先生は、最初こそ威圧的な態度も見せながらも愛情や母性に溢れる人物。一人の女性として共感できる部分が多い役どころでもあります。母親のいないビリーに変わって寄り添い、名門ロイヤル・バレエ・スクールを受験するビリーを父親とはまた違った形で送り出す。自分の中で先生像は描きやすく、私のキャラクターに合っているなと感じました。今まではその作品の初演に出演することが多かったのですが今回は再演、しかも新キャストという立場。緊張感やプレッシャーも感じるところかも知れませんが、今はまだ期待感や楽しみの方が強いですね。
――今回は4人の少年と共演します。意気込みは?
ビリーと踊るシーンがあるのですが、タップダンスの個人レッスンを始めました。それもマンツーマンでみっちりと。これまでに宝塚でもダンスは経験していましたが、ひさしぶりなので思うように足が動かなくて。タップダンスは全身運動。1時間もやると息が上がってしまいます。見るのとやるのとは大違い(笑)。ビリー役のキャストたちはみんな若いのでパワーもあるし、吸収力があります。彼らに負けないだけの体力と気力を持って意欲的に挑戦するつもり。とてもいい刺激になっています。
――ミュージカル作品の魅力について
幼い頃から歌が好きで、子供の頃からバレエを習っていたこともあり、パフォーマンスにはずっと興味があって。その後、ミュージカル『キャッツ』を観てビビッときてからすっかり魅了されました。舞台で人が歌い、踊る。その“リアル”を目撃し、汗、息づかいを感じて「人間はなんてすごいんだ!」と感動したものです。舞台のリアルはテレビでは決して感じられないこと。それだけでなく、ミュージカルは音楽によって感情や状況も伝えられる。表現に音楽は欠かせません。体全体で感じられるのが、ミュージカルの魅力ではないでしょうか。
――新生活を迎える若い世代に向けてメッセージを。
今までの人生で一番記憶に残っているのが、宝塚音楽学校の受験です。3回失敗して、(ラストチャンスの)4回目に合格しました。また落ちたら恥ずかしいし、本当は逃げ出したかった。「もう受けたくない」と諦めかけて別の道も考えましたが、父が「もう1回チャンスがあるのだから受ければいい」と背中を押してくれて。それでやってみようと思えました。とにかく負けず嫌いで、他の人にできてなぜ自分には出来ないのか認めたくない。何より自分に負けたくなかった。落ち込むだけ落ち込んだら、あとは這い上がるしかないですしね。開き直りが良かったのかもしれません。宝塚歌劇団の時もなかなかトップスターになれなくて。壁にぶつかった時や考えに煮詰まった時は、視点や意識を変えてみる。固執していた思いも無意識に手放してみると、思いがけず願いが叶ったりするものです。今は経験が積み重なったので回避できますが、そういう苦い経験は若い時にしか出来ないものです。「夢を追いかける」って簡単なことではないけれど、実は誰にでも出来ること。今は若い世代が夢を描けない社会だなんて言われますが、どんなことでもいい。夢を描いて欲しいと思います。
――最後に、この作品を楽しみにしている方々にひと言。
炭鉱不況にあえぐ田舎町で少年ビリーがバレエに魅了され、成長していく様をぜひ観て欲しいですね。彼を取り巻く大人たちが置かれた境遇や葛藤、様々な形の愛情表現は共感できることも多いはず。ぜひ足を運んでいただき、舞台のリアルを感じて欲しいですね。
――ありがとうございました。
ジャケット¥23,000 スカート¥18,000/ともにルーニィ
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パンプス¥14,000/ダイアナ(ダイアナ 銀座本店)
スタイリスト:弓桁いずみ(ゆみげた いずみ)
ヘアメイク:吉野麻衣子(よしの まいこ)