STORY
エヴァンは、社交不安障害の治療の一環として医師に勧められ、自分宛ての手紙を書いていたが、それを同級生のコナーに持ち去られてしまう。後日、コナーが自ら命を絶ち、彼が持っていたその手紙は「息子から親友への遺書」だと両親に誤解される。悲しみに暮れる両親を前に、エヴァンはとっさに嘘をついてしまう。やがて作り話はSNSで拡散されて大きな共感を呼ぶが、少しずつ真実が明らかになり、彼の世界は大きく揺らいでいく。

トニー賞6部門受賞の話題作が
10年の時を経てついに日本上陸
トニー賞を席巻した現代ミュージカルの金字塔『ディア・エヴァン・ハンセン』が2026年7月についに日本上陸。ダブルキャストで主人公のエヴァン・ハンセンを演じるのは、繊細な表現力が光る柿澤勇人と、圧倒的な存在感を放つ吉沢亮。SNS時代の孤独、他者との繋がりを渇望する切実な願いを、美しく力強い楽曲で描き出します。実力派の二人がそれぞれのエヴァンをどう形作るのか、その静かな熱演に期待が高まります。
エヴァンは、社交不安障害の治療の一環として医師に勧められ、自分宛ての手紙を書いていたが、それを同級生のコナーに持ち去られてしまう。後日、コナーが自ら命を絶ち、彼が持っていたその手紙は「息子から親友への遺書」だと両親に誤解される。悲しみに暮れる両親を前に、エヴァンはとっさに嘘をついてしまう。やがて作り話はSNSで拡散されて大きな共感を呼ぶが、少しずつ真実が明らかになり、彼の世界は大きく揺らいでいく。

『ディア・エヴァン・ハンセン』がトニー賞を受賞したときのパフォーマンス映像を観て「なんだこれは!」と大きな衝撃を受けたんです。すぐに英語版の音源と台本を取り寄せました。
ブロードウェイ作品の中でも本作は日本で上演しても違和感なくお客様に伝えられる、日本人向きの作品だなとすごく感じましたね。その後、映画化もされて、ミュージカル版と同じベン・プラットが主人公を演じていたんですが、それも素晴らしくて、ますます「やりたい」という思いは強くなっていました。たくさんの俳優仲間、多彩なジャンルで活躍している方々も皆やりたいと言っていたくらい、エヴァン・ハンセンは役者なら誰もがやりたい役なんですよね。
ブロードウェイ作品は日本に来るまでに時間がかかります。アメリカ、ロンドン、ヨーロッパ、韓国のあとに日本で上演されることが多くて。最初に『ディア・エヴァン・ハンセン』を知った当時の僕は27~28歳、「高校生役をやるならギリギリかな」と思っていたんです。あれから10年が経ちました。最初にお話を頂いたときは、10歳も年齢を重ねた自分にできるのかという不安もありましたし、今でも抱えています。実際に「年齢的に難しいと思う」とお伝えしたこともありましたね。それでも、僕に、と言ってくださる方々がいて。これは「30代最後の悪あがき」かなと心を決めてやらせていただくことにしました。
同世代の同級生役の方もいて心強いですし、ダブルキャストの吉沢亮さんをはじめとするトップクラスの天才的な俳優が揃った座組にも惹かれました。それぞれが真摯に役と向き合いながら、“今の自分たちだからこそ演じられる学生像”を届けようと話しています。ただ、学生役だからといって若く見せる努力をしなくちゃいけないかというと、そうでもない気がしています。この作品は家族や友情がテーマになっている、とても普遍的な物語。誰もが共感できる、心を揺さぶられる物語になるはずです。
彼のすごく優しいところがとても素敵だなと思います。優しいがゆえに、周りのことが見えすぎちゃったり気遣いすぎちゃったりして、結局自分がネガティブな方向に行ってしまったり、嘘に乗っちゃったりする。我を通すよりも「僕はいいから、みんなどうぞ」というタイプなところにはすごく惹かれますし、友達が少なかったり、コミュニケーションが苦手だったりするところは、僕自身すごく似ているなと感じます。
正直にいうと苦手なんです(笑)。僕は役者なので、プライベートではなく、作品や役で評価されたい。だから僕のX(旧Twitter)はスタッフと一緒にやっているんです。始めるときも「俺、いつでもやめる準備はできてるからね」と言ったほど(笑)。とはいえ、僕らの作品はSNSのおかげで広がることも沢山あります。でも自分がやるのはやっぱり苦手ですね(苦笑)。
当然、嘘はつきたくないですが、とはいえどこかでは絶対についているし、ついていない人間はいないと思っています。そもそも芝居は大きな嘘ですよね。役者じゃない人だって、相手や場所によって自分を装ったり、芝居をして生きている部分は誰しもがあると思います。正直に誰とでも付き合えたら素晴らしいですが、なかなかそうもいかないです。そんな誰もが抱えているものを、この作品では描いています。エヴァンも意図せずSNSの大きな渦に巻き込まれて、嘘を積み重ねてしまいます。彼の心の揺れ動きを大切にして演じたいです。

よく聞いていただくのですが、いざ自分が歌う側になると「お気に入り」なんて言っていられないんですよね(笑)。ものすごくキーが高くて、出したことのないキーまであるんです。ボイトレにも通っていますが、なかなか届かなくて。今はその責任とプレッシャーに押しつぶされそうです……。でもひとりの作品ファンとして聴いていると、本当に素晴らしい曲ばかり。特に『You Will Be Found(ユー・ウィル・ビー・ファウンド)』という楽曲には、「あなたは一人じゃない」という孤独に寄り添うメッセージが詰まっていて、いい曲だなと思っています。
ブロードウェイ版でも現代を舞台にした作品ならではの新しい演出がありました。日本版がどのような演出になるのかは、これからです。ぜひ日本版ならではの演出も楽しみにしてもらえればと思います。ブロードウェイでの初演から10年経った今の時代にも合わせてアップデートされたものになるはずです。今の僕たちがやる意味を込めて、精一杯お届けできればと思います。劇場でお待ちしております。
(取材・文/幸山梨奈)
(撮影/森 浩司)
【出演】
エヴァン・ハンセン(Wキャスト)
柿澤勇人/吉沢 亮
ハイディ・ハンセン(Wキャスト)
安蘭けい/堀内敬子
ゾーイ・マーフィー(Wキャスト)
木下晴香/松岡茉優
コナー・マーフィー(Wキャスト)
立石俊樹/廣瀬友祐
ジャレッド(Wキャスト)
上口耕平/須賀健太
アラナ(Wキャスト)
高野菜々/宮澤佐江
シンシア・マーフィー(Wキャスト)
瀬奈じゅん/マルシア
ラリー・マーフィー(Wキャスト)
石井一孝/新納慎也
尾関晃輔 澤村 亮 瀬崎宙乃 十川大希
福島玖宇也 藤田実里 渡邉 南
※各役五十音順
【脚本】
スティーヴン・レヴェンソン
【作詞・作曲】
ベンジ・パセック/ジャスティン・ポール
【翻訳・演出】
小山ゆうな
【訳詞】
高橋知伽江