2021年に日本初演を果たし、大きな感動を呼んだミュージカル『ジェイミー』の再演が決定!
主人公は、密かにドラッグクィーンに憧れる高校生のジェイミー。偏見や差別に苦しみながらも、母親との絆に支えられ、偽りない自分を表現し続けることで、いつしか周囲の目までを変えていく…。そんな純粋でひたむきなジェイミーを今作で初めて演じる三浦宏規さん、前作に引き続きジェイミーを演じる髙橋颯さん、実は同じ26歳であるおふたりに話を聞きました。
(左から)三浦宏規さん、髙橋颯さん
颯くんの「揺らぎ」にジェイミーを感じます
――三浦さんは初めて、髙橋さんは2度目となるジェイミー役。本日の取材の前には制作発表(プレイベント)も開催されましたが、改めて出演が決まったときのお気持ちや、お互いの印象を教えてください。
三浦 大好きな作品なので、出演することができて本当に嬉しいです。颯くんとはビジュアル撮影のときに初めてお会いして、その後に今日のプレイベントに向けての稽古が一度あったのですが、何ていうかちょっとね、距離の詰めかたが異常なんですよね(笑)。
髙橋 あはは、異常(笑)。
三浦 異常なくらい詰めてきてくれる、それが僕は本当にありがいなと思っています。僕は意外と人見知りなところがあるので、もうこれが颯くんなのかジェイミーなのかはわからないのですが、とにかくどんどん距離を縮めてきてくれるのが本当に嬉しいですし、助かっています。
髙橋 僕はふだんグループ(ダンスボーカルユニット「WATWING」)を組んで活動しているのですが、もうメンバーだと思って接しているんです。再びジェイミーに取り組めることが嬉しいので、初心に帰ったつもりでたくさん勉強していきたいです。今回はダブルキャストが三浦宏規くんと言うことで…こんなせっかくの機会に遠慮して距離を置いていたらもったいないと思って。だから、「好き!」という気持ちでどんどん関わらせて頂こうと思っています。
――稽古もご一緒されたと言うことですが、もともと持っていたイメージから変わったところはありますか。
三浦 そうですね、颯くんが過去に出ている作品の映像を見て、「こんな感じの人かな」と想像していたイメージといい意味で全然違いました。グループ活動もされていると聞いていたこともあって、なんとなくもうちょっとクールというか、キザな感じ?そんなタイプかと思っていたのですが、全然違っていました。とにかく柔らかくて、温かくて、愛情深い。ちょっと頼りなく見えるところも、それも愛らしさだし、自分に自信があるのかないのかわからない、そんな「揺らぎ」があるのも魅力で、そこがジェイミーっぽいというか。だから彼の作るジェイミーに惹かれるんだろうなと思っています…まだ全然知らないんですけどね(笑)。
髙橋 そんなふうに見てくれていたなんて、嬉しいです。僕はもう、宏規くんの年齢なんかは考えないようにしようと思っていて…。
三浦 いや、考えたところで同い年だけど(笑)。
髙橋 そうなんだけど(笑)。宏規くんは…言葉にすると安っぽくなってしまいそうですが、頼れるお兄さんにも見えるし、可愛い弟にも見える、不思議な魅力を持っている人です。まとまっているのかなと思えば、すごく砕けているところもありますし…。あとはアイディアがすごくたくさんある人。一緒に稽古しているときに、それをすごく感じました。「ああしたい、こうしてみたい」というのがどんどん出てきて、常に色々なことを思い描いているのだろうな、というのを感じましたし、それを隣で見られる瞬間は本当に幸せだなって。
三浦 「ああしたい、こうしたい」は僕、すぐ言っちゃうからね。わがままなんです(笑)。
髙橋 そんな宏規くんを見て楽しみたいし、学びたいし。動きかたから違うので、もうすでに一ファンになりつつあります!
三浦 今日のプレイベントで同じステージに立てたのは本当に楽しかったんだけど、実はこれが最初で最後の共演かもしれないよね。もちろん、宣伝イベントやトークショーなどはあるかもしれませんが、公演はWキャストなので舞台上で一緒にということはないので、ものすごく新鮮でした。どんな感じでやろうかという話もして…「鏡というか、本当にもう一人の自分だと思って」みたいなことを話し合ったよね。
髙橋 そうそう、相方というより双子という感じでって。
三浦 面白い感じでできたんじゃないかと思います。
完璧でない人間らしさがジェイミーの魅力
――おふたりはジェイミーという人間をどんな人だと捉えていますか。
三浦 ジェイミーは強い子だと思います。クラスでいじめられたり、お父さんにひどいことを言われても、それでも自分の思いを貫く力を持っていて、臆さずに進んでいけるというのは、ものすごい強さだと思います。彼が持っている自信は、もちろんジェイミーの大きな魅力ではありますが、物語の終盤でジェイミーがプリティに言う、「自分は本当は弱くて、醜いから」という言葉には、ジェイミーが今までどれだけ深く傷ついてきたかが詰まっているんですよね。それを聞くと、それまでの自信はすべて、その深い傷を隠すためだったとわかります。弱くて醜い自分が嫌いで、だからこそずっと強がってきたのがジェイミー。全然完璧な人間じゃなくて、クラスで人気者になれば調子に乗っちゃったりもする、人間らしさがあるのがジェイミーで、だからこそとても愛せる主人公だなと思っています。
髙橋 ジェイミーは4年前にも演じていますが、共感する部分がたくさんあります。僕にもやりたいことがすごくたくさんありますが、実際にそれらを実現するための一歩って、実はなかなか踏み出せなかったりします。劇中で躊躇しているジェイミーを見れば、僕も「もったいないよ!やりなよ!」と背中を押したくなりますから、やっぱり人生は「挑戦してなんぼ」ですよね。挑戦してもしなくても、人生では必ずどこかで壁にはぶつかるものだから、ひたすら信じて突き進めばいいじゃないかと思います。あとは自分のまわり中全部、愛してしまえばいいなって…。
三浦 すでに実践してるよな、それ!一昨日くらいからの稽古場でも「もう〜、みんな好き!」って。そんなこと稽古場で言う人、初めて見ました(笑)。
髙橋 あはは(笑)。実はこれ、前回の反省でもあって…。前回はジェイミーがいじめられている、みたいな雰囲気をつくってしまって、作品の理解が足りなかったかもしれない、実はもう一段階深く行けたかもしれないと思っていて。
三浦 ジェイミーがいじめられているところを描きすぎたってこと?
髙橋 そう。この作品はハッピーエンドだし、ジェイミーのエネルギーが周りに伝播していって、最後には敵対していたディーンですら暖かい愛で包み込むような、そんな人でありたいなと思っているんです。だから途中、迷惑かけちゃうところはもどかしいですが、謝るところは謝って、大切なものを見失わずに演じていきたいなって。
三浦 僕は映像でしか見られていませんが、ジェイミーがいじめられてしまう脆さとか、弱さとか、それが魅力だったけどね。自信のなさがジェイミーだと思って見ていたので、映像でも魅力的に映りましたよ。なんだろう、みんながみんな自信家じゃないですものね。僕なんかはもう、絵に描いたような自信家なんですけど(笑)。映像で見たジェイミーの自信のなさが、颯くん自身から出ているものか、ジェイミーから出ているものかはわからないのですが、そこがとても見えてきたとき、「頑張れ!」と背中を押したくなったので、4年前はそれはそれで正解だったんじゃないかと思います。でも、今回はまた違うアプローチで演じようとされているのも、ジェイミーを一度体験している彼だからこそだと思いますし…って、ごちゃごちゃしゃべっていますけど、僕はまだ1回もやってなくてすみません(笑)。
髙橋 あはは(笑)。そうですね、「こうでなきゃいけない」とは決めずに、全部正解、全部ジェイミーだと受け止めて、信じてやっていきたいです。
三浦 そうですよね、正解はない作品だと思いますし、役というものも、「こうでなきゃいけない」というのは限りなく少ないんじゃないかと思います。颯くんと(ダブルキャストだった森崎)ウィンくんも全然違ったわけだし。
髙橋 ああ、そうかもしれないですね。
三浦 映像でどっちも見て全然違ったし、どちらもすごく勉強になりました。
ジェイミーの限りないエネルギーでみなさんに勇気を届けたい
――ジェイミーはドラッグクイーンに憧れている少年、衣装にはハイヒールもあります。髙橋さんは2回目となりますが、何かアドバイスや心構えなどがありますか。
髙橋 それが…実は僕は過去に脚を痛めてしまったことがあって…そこからはずっとケアを続けています。ごめんなさい、ポジティブなことを言えなくて。
三浦 ええっ。それはめちゃめちゃ大変だったね。僕も気をつけます…。
髙橋 宏規くんは姿勢もいいので、見習いたいです。
三浦 いえいえ、僕はどちらかと言ったら姿勢は悪いほうなので、ひたすら意識するようにしているだけで…。でも最近は筋トレが趣味ですね。
髙橋 言ってたね。ダンベルで腰、痛めたんでしょ(笑)。
三浦 そうそう、ダンベル買っちゃって(笑)。
髙橋 腰椎は動かしちゃダメ。うちはメンバーも1回、腰やってるから、詳しいですよ。
三浦 そうだ、僕も腰はすでに2回、別作品で痛めてるんだった。だからそうですね、うん、ちょっと筋トレのやり方は間違えていたところがあったので、これからは気をつけながら頑張りたいと思います(笑)。
――最後に改めて、お客様にメッセージをお願いします。
髙橋 ハッピーで、不思議なエネルギーがある作品です。やりたくてもできないことがある人のバックグラウンドに、大きな社会問題だけでなく、家庭環境があったり、学校でのことがあったりすることを思うと胸がとても痛くなります。それら全部ひっくるめて抱擁してあげたいですし、ジェイミーという役を通して背中を見せ、限りないエネルギーをお渡しできたらと思っています。
三浦 『ジェイミー』は、現代の話だし、LGBTQとは何なのかとか、ドラッグクイーンとは何なのか、そんなことが理解できる作品になっているかと思います。ストーリーとして心に刺さる部分がものすごくたくさんあるのですが、そんなところを抜きにしても、楽曲もダンスもとても明るく楽しく、エンターテインメントとしてものすごく楽しんでいただける、ハッピーな作品です。きっと勇気をもらえると思いますので、たくさんの方々に観劇していただけたら。中でも僕は、ジェイミーたちと同世代である、ティーンの子たちに見てもらえたら嬉しいなと思います。
(取材・文/小川聖子)
(撮影/森 浩司)