INTRODUCTIONイントロダクション

世界的作家チェーホフの知られざる
恋愛ミステリーを
永井愛の独自目線で構築した4年ぶりの新作『狩場の悲劇』

日本の演劇界を担う二兎社の永井愛、4年ぶりの新作が11月に上演決定。『桜の園』『かもめ』などの戯曲で世界的に知られるロシアの作家アントン・チェーホフの長編ミステリー小説『狩場の悲劇』をベースに、永井愛独自の視点を盛り込んだ作品です。時代や国は違えど、社会情勢や人間模様を作品に投影してきたチェーホフと永井愛の奇跡のコラボレーションをお楽しみに!

STORYストーリー

帝政ロシア時代を舞台に
繰り広げられる愛憎劇

1880年のロシア。モスクワのある新聞社に、カムイシェフという元予審判事が「狩場の悲劇」という自作の小説を持ち込む。それは、彼が実人生で遭遇した殺人事件を題材にしたもので、オーレンカという森番の娘とカムイシェフ、知人の伯爵、伯爵邸の管理人が四つ巴に絡んだ愛憎劇。

小説を編集長に預けたカムイシェフは、掲載の可否を聞くため、三か月後にまた現れた。「僕の小説には、どんな判決が下されましたか?」 

まだ読んでいないと追い返そうとする編集長。だがカムイシェフは勝手に小説を語り始めてしまい―――真夜中の編集室で「狩場の悲劇」が展開される。

INTERVIEWインタビュー

二兎社、永井愛の作品には『こんばんは、父さん』以来、13年振りの溝端淳平さん。そして二兎社は初参加の門脇麦さん。日本の演劇界の若手実力派のおふたりに、作品への意気込みや見どころをお伺いしました。
門脇麦さん、溝端淳平さん
(左から)門脇麦さん、溝端淳平さん

出ないと絶対に後悔すると思って出演を決めました

―― 二兎社の永井愛さんの作品へは、溝端さんは二度目、門脇さんは初参加となります。日本演劇界を担う永井愛さんの新作に出演が決まったとき、どのようなお気持ちでしたか?

溝端 題材がロシアの作家チェーホフの作品だということよりも何よりも、永井さんの作品というのがいい意味でとてもプレッシャーです。13年前に永井さんの作品で平幹二朗さん、佐々木蔵之介さんと3人芝居をやらせていただいた経験が、僕の俳優人生の中で糧になっているのは確かです。

門脇 それは素晴らしい経験になりますよね。13年前ってことは、溝端さんは23歳くらい?そのような先輩方とご一緒できるのは、日々学びの時間になりますね。

溝端 若すぎたから怖さも何もなくて。年齢を重ねるほどに、あの舞台に出演できたことの重みというか凄さをひしひしと感じています。あのときの経験は僕にとって本当に宝ですね。実は30歳を過ぎた頃から、もう一度、永井さんとご一緒したいと思っていたのでとてもうれしいです。今回は念願の2回目。しかも永井さん脚色演出でチェーホフ(笑)。ありがたいことですが、なかなかのハードルを感じて身が引き締まる思いです。

溝端淳平さん

門脇 永井さんの演出ってどんな感じなんですか?

溝端 愛のある方だからこそなんですが、例えるなら1000本ノック(笑)。前回の作品の稽古のときを思い返すと平さんや蔵之介さんが永井さんからのチェック(稽古・本番を見た演出家からの修正点やアドバイス)を毎日ノートに書いていたんですよ。だから今回は、永井さんに鍛え直していただくということで、高いハードルを感じました。

門脇 私は永井作品は初めてです。ご依頼いただいたときに初めてお会いして、お話しする中で、永井さんの熱量をすごく感じたんです。難しそうな作品だし、もちろん台本もまだない段階だからどんな内容なのかも不安はありました。でも、これは出ないと絶対後悔するなと思って、ご一緒させてくださいとお返事したんです。

溝端 永井さんだからと出演を決めたのは僕も同じですよ(笑)。門脇さんが言うように難しそうというのは確かにそう。もちろんいい意味ですけれど、作品としてもひと癖も二癖もあるし、僕が演じるカムイシェフも一筋縄ではいかない役。他の役もみんな人間の業のようなものを抱えている。永井さんの作品だから、絶対に人間模様が深く造形的に、そして繊細に描かれるはずなんです。よくわかっていなかった若いころとは違い、今この年齢になって挑戦することにも高いハードルを感じています。

門脇 現代でもなく、国も違って帝政ロシア時代。役の名前も少し慣れないですね。

溝端 永井さんって、日本人なら誰もが共感するような家族のぬくもりのようなものを細やかなに作り上げていくイメージだったので、チェーホフは意外でした。でも、“時代が違うし、これはこういうもの”とわからないまま、ということには永井さんは絶対にしないから、きっと日本人の僕たちや観客にもしっかり刺さる作品になると思っています。それをしっかり咀嚼して表現していくのが僕らなんだけれど。

登場するのは俗物ばかり。永井演出ではどうなるのか楽しみ

門脇麦さん
―― 『狩場の悲劇』原作は読まれましたか?

溝端 ちょうど1カ月ほど、仕事で海外にいるタイミングがあったので、そのときに読みました。

門脇 まだ読めていないんです。

溝端 大丈夫。きっと台本になったら、永井さん独自の視点の世界になって新たな作品になっていると思います。ミステリーではありますが、7~8割は貴族たちのどんちゃん騒ぎ。その部分を永井さんがどう解釈して演出するのかが実は楽しみです。登場人物のほとんどがどうしようもない人たちなんです(笑)。門脇さんが演じるオーレンカもなかなかな女性でした。自己顕示欲の塊のようだけど、実はかわいそうな人なんですよ。

門脇 そうなんですね、溝端さんの解説を聞いたら、ますます楽しみになってきました。

―― 永井さんの演出について溝端さんがお話されていたのを聞いて、門脇さんどうですか?

門脇 私自身には、どういう演出されて、どんな指示があるのか、本当に楽しみです。永井さんのこれまでの作品を見たことはあって、役者の皆さんがのびのび自由に演じているなあと感じていたので、そんな細かく指示があるんだということに驚きました。

溝端淳平さん

溝端 のびのびしていますよ。決して雁字搦めにするとかではないんです。とにかくニコニコ、目をキラキラさせながら、演出する永井さんがいます。毎日いらっしゃいますし。

門脇 そうなんですね! そんなに丁寧に見てくれる方ってなかなかいないじゃないですか、皆さんお忙しいし。ありがたいですね。最近はよく舞台にも立たせてもらっていますが、同じ方とご一緒させていただくことが多くて、初めましての方とのお仕事は久しぶりなので、その点でも期待が高まります。

―― 写真撮影中にもおふたりは旅のお話をされていましたが、今回の作品でも各地をまわられますね。東京の紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAの他に、全国16カ所で上演されます。

門脇 私は旅も好きなので、こんなたくさん各地で上演できて、各地でお客さんに観ていただくのは楽しみですね。

溝端 関西は大阪じゃなくて兵庫と滋賀だったり、貴重な機会ですよね。劇場ってそれぞれ個性があって、音の響き方ひとつとっても全然違うんです。それを踏まえて演じるのもツアーの醍醐味。楽しみたいと思います。

(取材・文/幸山梨奈)
(撮影/森浩司)

《衣裳クレジット》

■溝端淳平

・スーツ タリアトーレ ¥203,500(税込)
エストネーション 
TEL:0120-503-971

その他スタイリスト私物

■門脇麦

・ドレス トーガ トゥ ¥75,900(税込)
TOGA 原宿店 
TEL:03-6419-8136

・イヤリング ラルク ¥4,290(税込)
ロードス 
TEL:03-6416-1995

CAST&STAFFキャスト&スタッフ

【出演】

溝端淳平 門脇麦 玉置玲央 亀田佳明 大西礼芳 加治将樹 岡田地平 ホリユウキ 水野あや 石井愃一 佐藤誓

【原作】
アントン・チェーホフ

【脚色・演出】
永井愛

INFORMATION公演情報

公演名
二兎社公演49『狩場の悲劇』
会場
【東京】紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
上演日
2025年11月7日(金)~11月19日(水)
料金
全席指定:7,000円