INTRODUCTION イントロダクション

本作は、ミュージカル『1789-バスティーユの恋人たち-』『太陽王』『ロックオペラ モーツァルト』、宝塚歌劇花組公演『CASANOVA』など、数々のヒット作を生み出しているドーヴ・アチア氏が音楽・脚本・作詞を手掛けるフレンチミュージカルの日本版。天から下される運命に立ち向かう主人公アーサーを演じるのは、浦井健治。最強の騎士として評されアーサーの敵として立ちはだかるメレアガンを演じるのは、伊礼彼方/加藤和樹(Wキャスト/五十音順)、アーサーに忠誠を誓うが恋敵となるランスロットを演じるのは、太田基裕/平間壮一(Wキャスト/五十音順)、アーサーの妻グィネヴィアには小南満佑子/宮澤佐江(Wキャスト/五十音順)、アーサーの甥ガウェインに小林亮太、アーサーの兄ケイに東山光明、アーサーに仕え導く魔術師マーリンには石川禅、アーサーの異父姉であるモルガンに安蘭けいの出演が決定した。

日本版の演出を手掛けるのは、『デスノートTHE MUSICAL』韓国プロダクションにて、2015年・2017年に演出捕として携わり、2020年には韓国ミュージカル界最高峰である韓国ミュージカルアワーズで演出賞演出賞を受賞、今、韓国演劇界で最も注目される新進気鋭の演出家オ・ルピナが担当。その他、日本版のクリエイター陣には、日本演劇界の錚々たる顔ぶれが集結し、ドーヴ・アチア氏による多彩な音楽と共に世界中で語り継がれるアーサー王の物語が装い新たに描かれる。

CAST&STAFF キャスト&スタッフ

【出演】

アーサー:浦井健治
メレアガン:伊礼彼方/加藤和樹 (Wキャスト)
ランスロット:太田基裕/平間壮一 (Wキャスト)
グィネヴィア:小南満佑子/宮澤佐江 (Wキャスト)
ガウェイン:小林亮太
ケイ:東山光明
マーリン:石川禅
モルガン:安蘭けい

【日本版台本・演出】
オ・ルピナ
【翻訳・訳詞】
高橋亜子

INTERVIEW インタビュー

オ・ルピナさん
演出家 オ・ルピナさん
──日本でのお仕事は初めてですか?

はい、そうです。今まで日本で演出をした韓国の演出家は、大先輩では何人かいらっしゃいますが、私の世代ではこんな大きな作品を日本で演出した人はいないと思いますので、とても光栄に思っています。

──8月には制作発表にご出席されました。どのような心境でしたか。

制作発表で、俳優さんたちと初めてお会いしたんです。そこでやっと、私が日本版『キングアーサー』の演出をする実感がわきました(笑)。韓国で準備をしているあいだは、本当に私が日本で仕事をするのか、実感がなかったんです。

──制作発表は、カッチリした「会見!」という感じではなく、ずいぶん和やかな雰囲気でした。冗談を言う俳優さんたちも多くて……驚かれませんでしたか(笑)?

その、愉快で楽しい感じが良かったです(笑)。安心しました。

──日本で初めてお仕事するということで、日本の演劇ファンにはオさんのことを知らない人もまだいるかと思いますので、ご自身のことを教えてください。どういう作品がきっかけで演劇ファンになり、演出家を目指されたのでしょう。

ミュージカルを好きになったきっかけは『キャッツ』です。でもミュージカル演出家になりたいと思ってからは、まだそんなにたっていないんです。私は演出助手をずっとやっていましたが、それは演出家になろうと思ってやっていたわけではないんですね。ミュージカルを作る空間にいたくて、そういう場に参加したくて、仕事をしていただけなんです。私はクリエイティブな作業は好きですが、何か目標を持ってそこに向かって走るタイプではなく、自分ができることを楽しくやろうというタイプ。大好きな作品に参加するだけで楽しい、だから一生懸命やる、と頑張ってきたらここまで来れました。

──そんな考えだったオさんが、演出家の道を進もうと思われたきっかけは?

韓国ではライセンス作品も数多く上演されていますが、オリジナル作品がとても多いんです。そんなオリジナル作品の中で私が演出した『ママ、ドント・クライ』という作品があります。この時に、作品を演出するというのはどういうことか、物語に(演出面から)どう近付いていけばいいのかという気付きがありました。演出の面白さを教えてくれた気がするこの作品は印象深いです。そのあと、オリジナル作品に積極的に関わるようになっていきました。『キングアーサー』も、これはフランスで生まれたミュージカルですが、脚色など自分なりに新しく作ることができたので、楽しかったです。

オ・ルピナさん
──お話にありましたが、オさんは韓国版の『キングアーサー』を手掛けていらっしゃいます。また、その前に『デスノート THE MUSICAL』の演出助手もされていますね。今回日本版の演出の話がホリプロからオさんにいったのは、そういった関係性の中からでしょうか。

確かに『デスノート THE MUSICAL』の時に、ホリプロさんに私の存在を知っていただいたのだとは思います。ただ、やはり今回の日本版の演出のお仕事は、韓国版『キングアーサー』がきっかけなんじゃないかなと思っています、私の推測ですが(笑)。私がオリジナルであるフランス版を観たときに思ったのは、作品の中のドラマが弱いなということ。フランスの『キングアーサー』は音楽が本当に美しく、ビジュアルもとても綺麗です。ただ韓国の観客は、それだけではなくキャラクターの内面、感情、ドラマ性を大事にし、そういうところを楽しむんです。ですから韓国版初演の時によりドラマ性を際立たせる方向で、作品を作り直しました。おそらく日本のプロダクションも同じ悩みを抱いていたのではないかと思います。『キングアーサー』韓国初演にホリプロの皆さんが観に来てくださったのですが、その悩みが解決されたドラマの部分を気に入ってくださったのではないかと思います。今度の日本バージョンは、そこからさらに発展させて作っていきたいと考えています。

──ということは、日本版は韓国でオさんが作ったものがベースになる? それともまったく新バージョンになる?

韓国で初演を作るとき、本当にいっぱい悩んで、悩んで、作りました。そしてそれが解決できたと思っています。ですので、基本は韓国バージョンがベースになると思います。ただ、それを表現する方法は日本バージョンとして新しく作りたいと思っています。

──ずばり、大切にしたいポイントは。

華やかで派手なショー的部分と、ドラマをうまく繋げること。『キングアーサー』の歌はすごくショー的で素敵なんです。いくらドラマを大切にといっても、その素敵な部分をドラマ性で潰してしまうわけにはいきません。ですので、演出でそのふたつの要素をうまく繋げることが私の仕事です。

──オさんは、アーサー王をどういう人物として描くのでしょうか。

アーサーがエクスカリバーを抜いたのは運命であり、そういうところは英雄かもしれません。ただ当初から私は、アーサーは誰よりも人間的な人物だと思っていました。苦労や苦悩を経て、悟っていく過程が人間的であり、それらを乗り越えていく過程こそが英雄に見えたんです。すごい力を持っているから英雄なのではなく、様々な苦しみに打ち勝っていく“人間的英雄”だと思いますので、そこにフォーカスを当てたい。実のところ、彼がエクスカリバーを抜いたのは、私にとってさほど魅力ではありません(笑)。それは、誰かから与えられたものですから。でも、それを完全に自分のものにし、そのパワーを維持していく姿がカッコいいんだと思います。

オ・ルピナさん
──キャストの方とは制作発表で初めてお会いしたとのこと。まだ深く知り合う前かと思いますが、現段階のキャストの印象を伺わせてください。アーサー王の浦井さんの印象と期待することは?

浦井さんは『デスノート THE MUSICAL』の時にお会いしています! その時に、明るいキャラクターも、深く悩むキャラクターもできる俳優さんだなと思いました。特に『デスノート』の夜神月は、悪の顔も見せる役でしたので。そして、私が拝見した初演は2015年でしたから、そこから7年過ぎています。その分年齢も経験も積んだ浦井さんは、アーサーの深い内面を見せてくださるのではないかと期待しています。

──会見で、印象的だった方はいらっしゃいますか。

モルガン役の安蘭けいさん! 目を合わせてお話をして、とても心が深い方だなと感じました。そしてマーリン役の石川禅さんは(歌唱披露イベントの)リハーサルの時、私にまで気を遣ってくださって、とても余裕を持っていらっしゃる方なんだなと感じました。マーリンがまさにそういう役。すべてのことをわかっていて、まわりを広く見渡し、みんなを細かく見ている。本当にぴったりだなと思いました。メレアガンの伊礼彼方さん、加藤和樹さんは、披露したナンバーが素晴らしかったので、楽しみ。メレアガンの曲は本当に難しいんです。今回、そんなにお稽古の時間もなかったと思うのですが、それでもあれだけの歌唱を聞かせてくださいました。メレアガンは自分のストーリーを歌で表現しないといけない役なので、期待しています。ほかの皆さんも素敵でした。全体的に、役に合う方がキャスティングされているなと感じています。

──ガウェイン役の小林亮太さんは、オさんが韓国で演出したオリジナルミュージカル『HOPE』の日本版で、“K”を演じていますよ。お話されましたか?

聞きました、聞きました! 私は日本版を観れていませんので、できることなら映像を観たいです(笑)。韓国ではKのことを「ペットのような原稿用紙」という表現をしているんです(※Kは原稿用紙を擬人化した役どころ)。主人公とずっと一緒にいて、時にいたずらもする。亮太さんにもそういう雰囲気を感じました(笑)。ガウェインはアーサーのそばに最後までいて、一貫してアーサーを支持する役なので、Kが似合っていたという亮太さんにはぴったりの役だと思います。

──最後に、『キングアーサー』という作品は、オさんにとってどんな存在か、教えてください。

まずは、日本という私にとって新しい場所で仕事をさせてくれるきっかけにもなった、素敵な作品です。そして、そもそも2019年に韓国で初演する時に本当に苦労したんです。個人的にも悩みも多かった時期に出会った作品でもあり、「みんなと話をしながら、辛いことに耐え、前に進んでいかなければならない」ということを、私自身も作品を通して学ぶことができた、とても大好きな作品です。この作品を通して成長することができたと言っても過言ではありません。観に来てくださるお客さまにとっても、単純なショーではなく、そういう経験になる作品になってくれればいいなと思います。

(取材・文・撮影:平野祥恵)

PHOTO 制作発表会

記者発表・歌唱披露の様子を一部ご紹介します。

  • 伊礼彼方さん
  • 加藤和樹さん
  • 小南満佑さん
  • 浦井健治さん
  • 宮澤佐江さん
  • 石川禅さん
  • 伊礼彼方さん、浦井健治さん
  • 集合写真
  • 伊礼彼方さん
  • 加藤和樹さん
  • 小南満佑さん
  • 浦井健治さん
  • 宮澤佐江さん
  • 石川禅さん
  • 伊礼彼方さん、浦井健治さん
  • 集合写真

EVENT 公演情報

公演名
ミュージカル『キングアーサー』
会場
【東京】新国立劇場 中劇場
上演期間
2023年1月12日(木)~2月5日()
料金
S席:13,800円⇒
《ご優待価格》 平日 10,220円/土日 11,680円

公演終了