イントロダクション

名優・柄本明が主演する人気舞台が
渡辺えり、江口のりこなど新キャストを
迎えて4年ぶりに新作を上演

名優・柄本明を主演に、見川鯛山「田舎医者シリーズ」を舞台化した『本日も休診』が、2025年10月、装い新たに二度目の舞台化を果たします。2021年の第一弾から引き続き、共演者として名を連ねる佐藤B作、笹野高史に加え、渡辺えり、江口のりこが新たに主要キャストとし加入。昭和50年代の栃木県那須高原を舞台に、破天荒な山医者と個性豊かな村人たちの心温まる交流を描きます。

ストーリー

破天荒な医者と変わり者ばかりの村人が
繰り広げる人情喜劇

昭和50年代、那須高原の「見川医院」は、訪ねてくる患者が少ないのをいいことに医師・見川鯛山(柄本明)が今日も「本日休診」の札を掲げている有様。村人からは「ヤブ医者」と揶揄されています。そんな中、リゾート開発計画が持ち上がり、騒動に。村のリゾート地化に反対する女性・民代(江口)の自然への想いに鯛山も心を動かされ・・・・・・。

インタビュー

舞台『また本日も休診』では、自然を愛するがゆえにリゾート開発に反対する民代役を演じる江口のりこさんに取材。役作り、今回の作品の見どころ、師匠でもある柄本明さんとの共演などについてお話いただきました。
江口のりこさん
江口のりこさん

大先輩方との共演は、でっかい“祭り”に巻き込まれている感覚

―― 見川鯛山作の「田舎医者シリーズ」を舞台化するのは、今回で2回目。柄本さんはじめ、第一弾から出演するメンバーを含めて、主要キャストは江口さんにとっては先輩方ばかりです。記者会見では「ちょっとしんどいけれど、学びがあるから楽しみ」とおっしゃっていました。今回の作品では、師匠の柄本明さん始め、渡辺えりさん、佐藤B作さん、笹野高史さんたちからはどんなことを学びたいなと思っていらっしゃいますか?

「学び」というのは多分どこにでもあるものなので、「ここを学びたい」とか、「ああいうところを見習いたい」といった具体的なことは思っていないんです。皆さん長年にわたって、喜劇をやられてきた大先輩ばかり。しかもその中には私が所属する劇団「東京乾電池」の座長の柄本明さんもいます。そういう方々がひとつの作品を作り上げていくところを間近で見られる、そこにご一緒できる嬉しさはありますし、きっとその過程は楽しいだろうというワクワクした気持ちもあります。でも、尊敬している方々ばかりだからこそ、しんどいなあというという気持ちもあり、複雑な思いが入り混じっています。

―― 以前、あるインタビューで師匠である柄本明さんのことが「すごく怖い」とおっしゃっていましたが、それは今も変わりませんか?

はい、変わらないですね。ずっと変わらないと思います。それに今回は劇団の公演じゃなくて、外に出てやるとなると、さらにまた違った緊張感もありますね。

江口のりこさん
―― その“怖い”師匠とともに長年日本の演劇界を担ってきたメンバーとの舞台ですが、どんな印象をお持ちですか? 初めての共演の方もいらっしゃいますか?

全く初めてという方はいなくて、笹野さんとはテレビドラマで共演したことがありますし、B作さんはお仕事ご一緒したことはないんですけれども、所属する劇団「東京乾電池」の稽古場が使えなかったときに、B作さん主宰の「東京ヴォードヴィルショー」の稽古場を使わせてもらったという縁もあります。えりさんは私が研究生のころから見てくださっているし、いろいろな劇場の楽屋でお会いして、お話させていただいたり。
皆さん、うちの座長と長年ご一緒されている方ばかりなので、勝手に親戚のように思っていますが、それにしても、なんで私はこの舞台に出ることになったんだろう、とは、ふと思いますね。なんだかとてつもなくでっかい祭りに巻き込まれている、そんな感覚です(笑)。

―― 記者会見では、柄本さん、佐藤さん、笹野さんは、「同窓会のようでうれしい」とおっしゃったり、「誰から抜けていくのか」など冗談も交えてお話しされていて楽しそうでした。

今日の記者会見は、先輩方がネタにしていたため、高齢が強調されていたところもありましたが、実際に出演される方には20代の若い方たちもいらっしゃいますし、私と年齢が近い40代の矢部太郎さんも出られます。いざ全員揃っての稽古が始まれば、先輩方も年齢のことをどうこうなんて冗談をいうこともなく、作品に向き合っていくことになると思います。

“変わり者”の民代さんも私に比べたら社交的

江口のりこさん
―― 『また本日も休診』は昭和50年代が舞台です。時代劇のような大昔でもなければ、現代劇でもなく、江口さんがお生まれになった頃で、生きてはいるけれどあまり記憶もない時代かと思います。近いような遠いような時代を舞台に演じるは難しいものなのでしょうか?

そうした時代背景のような部分は、美術や衣装、小道具が助けてくれるんですよね。宣伝用のポスターの撮影をしたときには、まだ台本もできていなかったので話の筋は全く知らなかったですし、キャラクター設定も「人見知りな女性」で「炭を売って暮らしている」くらいしかない状態。そんな中、オーバーオールを着て撮影をしていて、一体どんな舞台なるんだろうな思っていましたが、改めて今ポスターを見ると、私の演じる民代さんらしいですよね。
それに舞台設定は昭和50年代ですが、台本を読むと現代にも通じるお話で、「昭和50年代が舞台です」っておっしゃっていただくまで、そのことをすっかり忘れていたくらい。都会ではなく田舎の話ということもありますし、あまり時代には縛られすぎずに演じていきたいと思っています。

―― 江口さん演じる民代さんは、曲者ぞろいの村人の中でも“変わり者”扱いされています。ご自身では民代という人物をどう分析されますか?

一見、変わり者には見えるかもしれませんが、彼女は変なことを言っているわけではなく、実は正しかったりするんですよね。本当の意味での変わり者ではなく、ただ人とコミュニケーションを取るのが苦手な人。キャラクターを端的に説明するとなると変わり者という表現になってしまうのだろうし、この物語の世界では、みんなの輪の中に入ってこない頑固者に映るのかなとは思います。ただ、台本を読むと、私に比べたらずっと社交的。民代さんを見習いたいです。

江口のりこさん
―― リゾート開発の話が持ち上がり、騒動になっていくところをフックにしながらも、悲喜こもごもの人情劇になっていくと聞きました。江口さんが考える、この舞台の見どころはどんなところでしょうか。

とにかくほんわかとした温かい作品になると思います。狂言回し(観客に物語の進行を理解させる手助けをする役割)の矢部太郎さんの語り口の温かさや柔らかさ。そして、音楽を担当するパスカルズさん(元バンド「たま」のメンバーも所属する、アコースティックオーケストラ的な演奏をするグループ)が演奏も相まって、本当に温かい作品になると思います。
リゾート開発騒動などもありますが、それはきっかけにすぎなくて、舞台の核になるのは、その中で交わされる会話や人と人の繋がり。難しいところも堅苦しいところもまったくなくて、本当にすぐ近所で起きている人間ドラマという感じなので、今の時代に生きる人たち誰もが違和感なく作品世界に入っていけると思います。お子さんに見てもらっても理解できるし、楽しんでもらえるはずです。

―― 今回の『また本日も休診』の上演期間中には、新たな試みとして、劇場で那須の魅力などをPRデーというものも実施されるそうです。江口さんは那須にはどんなイメージがありますか?

聞いたときはなんだか変わった面白いことするなあと思っていました。私自身は那須の温泉が好きで、1年に1回は行っています。『また本日も休診』を見て、PRも見て、那須を好きになってもらえたら。そのためにも、舞台を精一杯演じたいと思います。

(取材・文/幸山梨奈)
(撮影/中村麻美)

キャスト&スタッフ

【出演】

柄本明 渡辺えり 江口のりこ 佐藤B作 笹野高史

林翔太 市川美織 松金よね子 花王おさむ 矢部太郎 星野園美 佐々木春香 大西多摩恵

西本竜樹 中田浄 春可直子 上原奈美 西村喜代子 小島久人

【原作】
見川鯛山
「田舎医者シリーズ」

【脚色・演出】
田村孝裕

【音楽】
パスカルズ

公演情報

公演名
『また本日も休診~山医者のうた~』
会場
【東京】明治座
上演日
2025年10月23日(木)~11月2日(日)
料金
S席(1・2階席)12,000円