『新春浅草歌舞伎2024』のチケット情報

新春浅草歌舞伎2024

演目
PROGRAM

  • 第1部
  • 第2部
第1部

お年玉〈年始ご挨拶〉

一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)

十種香

八重垣姫・・・・・中村 米吉
武田勝頼・・・・・中村 橋之助
腰元濡衣・・・・・坂東 新悟
白須賀六郎・・・・・中村 種之助
原小文治・・・・・坂東 巳之助
長尾謙信・・・・・中村 歌昇

三世瀬川如皐 作

二、与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)

源氏店

切られ与三郎・・・・・中村 隼人
妾お富・・・・・中村 米吉
番頭藤八・・・・・市村 橘太郎
蝙蝠の安五郎・・・・・尾上 松也
和泉屋多左衛門・・・・・中村 歌六

三、神楽諷雲井曲毬(かぐらうたくもいのきょくまり)

どんつく

荷持どんつく・・・・・坂東 巳之助
親方鶴太夫・・・・・中村 歌昇
太鼓打・・・・・中村 種之助
大工・・・・・中村 隼人
子守・・・・・中村 莟玉
若旦那・・・・・中村 橋之助
芸者・・・・・中村 米吉
白酒売・・・・・坂東 新悟
田舎侍・・・・・尾上 松也

第2部

お年玉〈年始ご挨拶〉

一谷嫩軍記

一、熊谷陣屋(くまがいじんや)

熊谷直実・・・・・中村 歌昇
相模・・・・・坂東 新悟
藤の方・・・・・中村 莟玉
梶原平次景高・・・・・中村 吉之丞
堤軍次・・・・・中村 橋之助
源義経・・・・・坂東 巳之助
白毫弥陀六・・・・・中村 歌六

二、流星(りゅうせい)

流星・・・・・中村 種之助

河竹黙阿弥 作
新皿屋舗月雨暈

三、魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)

魚屋宗五郎・・・・・尾上 松也
女房おはま・・・・・坂東 新悟
小奴三吉・・・・・中村 種之助
磯部主計之助・・・・・中村 隼人
菊茶屋娘おしげ・・・・・中村 莟玉
菊茶屋女房おみつ・・・・・中村 歌女之丞
父太兵衛・・・・・市村 橘太郎
鳶吉五郎・・・・・中村 橋之助
召使おなぎ・・・・・中村 米吉
岩上典蔵・・・・・坂東 巳之助
浦戸十左衛門・・・・・中村 歌昇

インタビュー
INTERVIEW

コロナ禍での休演を乗り越え、2023年より再び始動した『新春浅草歌舞伎』。2015年以降、リーダー的な役割を担ってきた尾上松也さんに、舞台への意気込みを伺いました。

尾上松也さん
尾上松也さん

僕たちの『新春浅草歌舞伎』はこれが最後!
後輩たちにバトンを渡したい

―― 2023年は3年ぶりの上演となった『新春浅草歌舞伎』ですが、2024年の公演に向けてはどんなことを考えていらっしゃいますか。

コロナ禍では2年もの間、幕を開けることができなかったので、「もしかして、このままなくなってしまうのではないか」と不安に思ったこともありました。僕たちには「絶対になくしたくない、なんとかして繋げたい」という強い思いがありましたので、今年(2023年)無事に上演することができたときには本当に嬉しく、またホッとしました。
ただ、まだ昼公演、夜公演の出演者が被らないようにするなど配慮が必要でしたので、それぞれのパートで「こんな舞台になる」という報告や相談はしましたが、なかなか出演者全員が揃って出来なかったことが残念でしたね。
もともとは、第1部も第2部も出演者が入り乱れてお役を演じて……というのが例年の形式でしたが、この年は一緒にお稽古をしたり、顔を合わせることもほぼありませんでしたし、公演中も、夜の出演者は、昼の出演者が完全に帰ってから劇場に入るということを徹底しておりましたので、大変静かで……。楽屋でも、外からみんなの賑やかな声が聞こえてこなかったのは、やはり寂しいと感じました。2024年は完全復活できるということで、僕自身とても楽しみですし、本当の意味での再スタートになると思っています。

―― 松也さんは、2015年からは若手のリーダー的存在として、中村歌昇さん、坂東巳之助さんらとともに、『新春浅草歌舞伎』を盛り上げてこられました。

そうですね。10年以上『新春浅草歌舞伎』に出演させていただき、ありがたくもリーダーという立場でやらせていただいてきましたが、実は僕は、『新春浅草歌舞伎』への出演は2024年を最後に、より若い世代に譲りたいと考えています。
というのも、『新春浅草歌舞伎』は、まだまだ経験値の少ない若手たちが活躍できる場でなくてはならないと思っています。自分たちを思い出しても、僕がリーダーを任された2015年頃というのは、歌昇くんも、巳之助くんも、今のように他の劇場で主役を任される、責任を持たせてもらえる……というポジションではありませんでした。その頃、そんな若手はいなかったんですよね。だからこそ、『新春浅草歌舞伎』は特別な場所でした。
10年の間に、それぞれが活躍の場を広げて、浅草以外でも責任を持って活動するという機会がどんどん増えてきていると思います。そういう意味で、僕は2024年を最後に、後輩たちにバトンを渡す、という選択をしたいと思っています。もちろん、『新春浅草歌舞伎』がなくなるわけではありません。今後を託す後輩たちにはぜひ、浅草で活躍して、最終的にはもう、浅草では収まり切らないというくらいに活躍の場をどんどん広げていってほしいと思います。

―― 大きな決心をされたのですね。2024年度の演目は、現時点(10月初旬)ではまだ発表されていませんが、何かお考えになっていることはありますか。

まだ実現できるかまでを含めて検討中ですが、演目に関しては、今までやりたくてもやれなかったことに挑戦したいと思っています。きっと浅草歌舞伎の間口を広げることにもなると思いますし、後々後輩たちに「松也さんたちの代であれをやったのなら、これもできるんじゃない?」と、選択肢が広がっていくようなことになればと思っています。
配役も含め、実現できればいいのですが……。全員が勢揃いして一緒に出られる、というような演目を最後に上演できればと考えています。

―― それは大変楽しみです。

10年もの間、同じ舞台に立った仲間たちの活躍が嬉しく頼もしい

尾上松也さん
―― 『新春浅草歌舞伎』のおよそ10年を振り返って、特に印象的だった公演はありますか。

毎年の公演はどれも忘れられないものばかりですが、やはり一番最初の公演は、失敗や反省が多かったこともあり、印象が強いですね。自分が29、30歳の頃はさまざまな環境が大きく変化していった時期で、その最たるものが、『新春浅草歌舞伎』でリーダーを任されたということでした。大きな喜びではありましたが、当時の自分はまだまだ心の面でも技術面でも、まったく追いついていないような状態でしたので、正直に言えばアップアップで。ですからこの最初の公演は、今思い返すと恐ろしくもあり、誇らしくもあり……色々な思いが交錯する思い出の公演になっています。

―― その後、毎年の公演を重ねながら、手応えをつかんでいった感じでしょうか。

少しずつですけれど、そうですね。僕だけではなく、他のみんなもそんな感じだったのではないでしょうか。ただ、年始のこの時期は、人によっては他の劇場に出ていることもありましたので、入れ替わり立ち替わりというところはありました。そんな中、毎年必ず一緒にやってきたのは巳之助くんと隼人くんですね。ただ他の方たちも、たとえ自分が出ていない年でも、浅草への意識というのを持っていてくれていました。だからこそ、再び舞台に立つと「ただいま」「帰ってきたよ」という言葉が出てきます。そんなことが積み重なって、それぞれが浅草に対する思いというものをブラッシュアップしてきたような気がしています。

―― みなさんとの浅草での思い出などはありますか。

みんな仲がいいですし、もちろん何度か一緒に食事に行くことはありました。ただ、この公演に関しては本当にみんな有意義な取り組みにしていこうという思いが強く、その意味では緊張感も必要だと思っていましたので、公演中に頻繁に飲みに行く、なんてことはないようにしていました。
そうして温めた関係で、巳之助くん、隼人くんで新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』が上演されたときには「浅草以外でもふたりでしっかりやっているんだな」と嬉しく思い、自分たちの責任をしっかりと果たしているなと頼もしくも感じました。歌昇くんも弟の種之助くんと一緒にしっかりとやっていますし、(坂東)新悟くんや(中村)米吉くんもたくさんの先輩方に重宝され、お声がけいただいている姿を見ると、こちらも本当に頼もしく思います。そんなことが年々増えていますので、本当に喜ばしいことだと思っています。

映像もミュージカルも、自分が挑戦することで道を開けたら

―― 松也さんご自身も、2023年だけををみても大変な忙しさ、ご活躍だったと思います。舞台だけでも、『新春浅草歌舞伎』から始まり、新作歌舞伎『ファイナルファンタジーX』、『團菊祭五月大歌舞伎』、演出も手がけた新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』、ミュージカル『スリル・ミー』、『ガラスの動物園/消えなさいローラ』、さらに12月には新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』が控えています。このほかに映像や歌の世界でも頻繁にお姿を拝見しました。

そうですね。20代前半から、「必要とされる役者にならなければ」ということはずっと思っていましたから、いろいろなジャンルからお声がけいただけるというのは純粋に嬉しいです。ミュージカル『スリル・ミー』は9年ぶり、2度目の出演なのですが、改めて未知の世界であると感じました。この作品のように、自分が想像できなかった世界での体験やチャレンジがどんな風に自分に影響し、ゆくゆく何に繋がっていくのか……。まったくわかりませんが、そんなことも、今は楽しみながらできています。
それから今年は特に、自分が企画、演出、主演を勤めさせていただいた新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』を実現できたのも大きなことでした。自分が自主公演を始めたのも、新作歌舞伎を作らなければと思ったのも、もともとは先輩方から影響を受けたことから始まっています。自主公演はもちろんのこと、新作歌舞伎でしたら(尾上)菊之助さんや(中村)獅童さん、またカンパニーや座組の作り方や思いについては、(尾上)菊五郎さんや(中村)勘三郎さんからも影響を受けていますし、歌舞伎に関しては本当にたくさんの先輩方の影響を受けていますね。だからこそ、自分の取り組みも、後輩たちの活動の広がりや、新たな可能性に繋がるといいなと思っています。
今はミュージカル『スリル・ミー』に取り組んでいる最中ですが、歌舞伎俳優がミュージカルに出演するのは、もともとは(松本)幸四郎さん、今の(松本)白鸚さんが道を切り開かれ、今は白鸚さんとともに僕と(尾上)右近くんも取り組んでいます。一度、(中村)橋之助くんも出ていましたね。こうして「松也さんたちがやっているんだからやってみようか」と後輩たちがジャンルに囚われずに、新しいことに挑戦していってくれたら、結果的に歌舞伎への注目や普及にも繋がると思いますので、そうなったらいいなと思っています。

追い込まれないと力を発揮できないタイプです(笑)

尾上松也さん
―― 松也さんご自身のスケジュール管理や体調管理はどうされているのですか。

基本的には何もしていませんね。体調管理もそこまでは……ただ、コロナ禍の間に、家でリラックスすることも大切だということには気がつきました。趣味を持つなど、リフレッシュの時間を作ったり、移動時間中は心身ともにあまり負担がかからないようにすることも大切だなと……そんなことも少しずつ考える年齢にはなってきました。
ただ、自身のメンタルやモチベーションは、基本的に自分の好きなことをしていて、好きなことを仕事にさせていただいているので、落ちることはありませんね。今はもう数年先まで色々なことが決まっていて、正直「その頃はどんな感じかわからないよ!」と思ったりもするのですが(笑)、それでもそんな仕事のひとつひとつが、ふとしたときにも「ああ、〇年後にあの仕事あるな、この仕事が待っているな」とモチベーションになっています。もちろん大変ですし、疲れたなと感じることもありますが、それが僕の一番のエネルギーの糧なんですよね。

―― 映像も舞台も準備が必要なのに、そこをしっかりされているのは大変なことだと思います。

自分ではしっかりやっているとは到底思えないのですが(笑)。準備にかける時間は人それぞれで……そこは本当に自分のペースですね。というか僕、ストイック性ゼロなんですよ。もう、その場をしのいでしのいで、という感じ。そんな自分のスタンスややり方に「これでいいのか」と悩んで、変えようとしてみた時期もあるんです。何度かはちょっと準備期間を長めに設けて、やってみようと思ったこともあるのですが……それですと自分は何もうまくできなくて。やや早い段階で何かを考えるということが、あまり向いていない。追い込まれないと集中力が発揮できないタイプのようです(笑)。そんな自分の特性が長年やってきて、ようやくわかってきました。何においてもギリギリになることが多いです。
もちろん評価されたいですし、皆さんから必要とされていたいですが、どう足掻いても、役者というのは結局、「結果」が出せるかどうか。それは、フタを開けて見なければわからないことですので……無理をして、いつも自分が出せるものさえ出せなくなるくらいだったら、人から何を言われようと、自分がやりやすいやり方で、自分が思うようにやろうと、今はそう思っています。

―― ご自身の力の出し方をよくわかっていらっしゃるんですね。最後に、『新春浅草歌舞伎』を楽しみにしているお客様にメッセージをお願いいたします。

自分に関することは常にギリギリなのですが、多くの人に関わっていただく作品に関しては、なるべく早い段階から取り組んでいます。『新春浅草歌舞伎』も、今年の舞台をやらせていただいていたときから考えていた内容を詰め込みたいと思っておりますので、ぜひご期待いただければ。こちらは若い世代が中心になっておりますので、同世代の方には身近に感じていただけると思いますし、演目もとにかく分かりやすく、見やすくということを心がけていますので、初めての方にも楽しんでいただけると思います。また、毎年開演前には出演者から口上という形でお話をさせていただいております。浅草の街もお祭りムードですので、歌舞伎を観た後も楽しく遊んでいただけるはず。そんな街の雰囲気まで味わっていただけたら、歌舞伎の楽しさも倍増するのではないかと思います。ぜひ、2024年の年始には浅草公会堂に足をお運びいただければと思います。

(取材・文/小川聖子)

公演情報
INFORMATION

公演名
『新春浅草歌舞伎』
会場
浅草公会堂
公演日程
2024年1月2日(火)~1月26日(金)
料金
1等席:9,500円⇛《優待価格》1等席:8,000円
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