INTERVIEW
2025年秋に日本での特別公演が決定した伝説のミュージカル『コーラスライン』。2021年に新演出の許可がおり、イギリス公演で大成功を収め、日本で初めて上演されます。今回は主演のザック役を演じるアダム・クーパーさんに新たな演出の見どころや本作にかける意気込みを伺いました。
アダム・クーパーさん
傑作ミュージカルを最強バージョンで堪能できます。
―― 今回の出演が決まった時の率直な感想を教えてください。
今回のオファーをいただいた時は心底ワクワクしました。それは有名な作品を新しいバージョンで演じることができるからです。演出家のニコライ・フォスターさんの大ファンなのでご一緒できることもとても嬉しく思います。今回の振付は新進気鋭の人気振付家エレン・ケーンさんということで、より素晴らしい作品に仕上がるはずです。
―― 新しい演出でチャレンジしてみたいことはありますか。
これまでと違ったザックを演じることが非常に大切だと思います。旧バージョンだとザックはいつも客席にいて声だけしか聞こえません。ザックがダンサーたちと距離を取っているというのは理解できるのですが、少しフラストレーションを感じていたのはザックがオーディションを受けている人にどう影響を与えているのかが見えないことです。各ダンサーのどこに興味を持っているのかもわかりませんでした。今回のバージョンではザックが舞台上に上がってきます。オーディションを通してザックがどのような感情を抱いているのか見ることができます。オリジナル版ではザックを一つの方向からしか捉えていなかったので、なぜ彼が厳しいキャラクターなのかが見えませんでした。キャシーとはもともとパートナーだったことや以前会ったことがあるダンサーがオーディションを受けていたという事実が声だけだとわかりません。舞台上に出て行くことでさまざまな方向からのアプローチでザックを見ることができます。
―― 本作の見どころを教えてください。
すべてが見どころと言っても過言ではありませんが、特にオープニングが最もワクワクするのではないでしょうか。オーディションの現場にいるような臨場感あふれるオープニングが気に入っています。音楽にインパクトを与えるためにオリジナル版よりも上演時間が短くなっています。もともとはジャズやバレエのシーンが7〜8回繰り返されるのですが、そのシーンを凝縮することによって、エネルギーを1曲ごとに集中させているんです。でも、本当に全部が見どころなので最初から最後まで楽しんでいただけたらと思います。
―― ダンサーであり、演出も手掛けているアダムさんはザックとの共通点が多いと思うのですが、ザックに共感できるのはどんなところですか。
ザックが感じているストレスはよくわかりますし、ザックがなぜそんなに厳しいのかということも理解できます。というのも、オーディションで誰かを選ぶとなると厳しくならなければいけない時があるからです。
あと、ザックがオーディションでダンサーたちの踊りだけを見ているのではなく、人間性を見て選んでいます。私もオーディションの時は同じように人を見て選ぶようにしています。ただし、ザックのように質問をたくさんはしませんけどね(笑)。面白い人だなと興味を持った人を選ぶようにしています。技術的に素晴らしいダンサーはたくさんいますが、人間的に繋がっていけるかという点を大事にしています。この作品におけるオーディションは4〜5時間かけて行われる身体的に強いストレスがかかるものです。ザックは厳しいですが、私はもっと優しいというのが大きな違いですかね(笑)。
―― 今回、演出を担当するニコライさんの大ファンというお話がありましたが、彼の演出のどんなところが好きですか。
もともとあるものを別の視点で切り取って仕上げていることが素晴らしいと感じています。今を生きる私たちの視点といってもいいかもしれません。彼が手掛けた『エビータ』も『ビリー・エリオット』も観ましたが、大好きな作品です。私は『ビリー・エリオット』に声のみ出演させていただいたのですが、彼の作品の捉え方が好きなんですよ。上から指示を出すのではなく、役者と一緒に作品を創り上げていく演出家だと感じています。人間的にもとても謙虚で素敵な人なんですよ。
―― 作品の要ともいえるダンスですが、振付で期待されていることはありますか。
彼女のエネルギッシュさがダンスを通して作品に現れて良いものが出来上がると思います。一緒に仕事をする中で刺激を与えてくれる存在です。初めて一緒に仕事をした時に、彼女はひとつひとつの動きに対してなぜその動きなのかという理由を教えてくれました。すべての動きにストーリーがあるんです。
昨年、本作への出演が決まった時に、ザック役にソロパートが追加されたので、彼女と共同で振付をする機会がありました。その時に彼女のことをたくさん知ることができて、彼女が物語を紡ぐ存在であると確信しましたね。
―― 観に来てくださるお客様にメッセージをお願いします。
観てくださった方がどのような反応をするのかが今からとても楽しみです。皆さんに私が演じているのと同じように楽しんでいただけたら良いな思います。皆さんから感想を聞くのも楽しみですね。
(取材・文/白井由香里)
(撮影/中村麻子)