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ミュージカル
チェーザレ 破壊の創造者

イントロダクション

「モーニング」にて連載されていた累計140万部突破の大ヒット歴史漫画「チェーザレ 破壊の創造者」(原作:惣領冬美 監修:原 基晶 講談社刊)が待望のミュージカル化。美麗な作画とドラマチックな描写で幅広い層から支持を集める人気作家、惣領冬実による壮大な歴史絵巻がミュージカルとして生まれ変わります。
明治座は、創業以来“初”、幻のオーケストラピットを稼働し、生演奏による本格ミュージカルを上演いたします。

「チェーザレ 破壊の創造者」とは

15世紀に活躍し、31歳の若さで亡くなったイタリアの軍人であり政治家、チェーザレ・ボルジアの理想に燃えた戦いを惣領冬実が描いた歴史大河コミック。講談社発行のコミック誌「モーニング」にて2005年から2021年まで連載され、コミックスは13巻刊行。累計発行部数は140万部を超える大ヒットを記録している。ダンテ研究者・原基晶を原作監修に、貴重な資料の収集やそれらの整理に膨大な時間をかけた歴史大作であり、フィクションでありながら極力史実に沿って描かれている。

ストーリー

ルネッサンスの夜明け── 男は中世を破壊した。
争いに向かおうとする不穏な時代に、
全ヨーロッパ統一という野望を抱いた男の戦いの物語。

1475年、ローマ。ボルジア家の領袖ロドリーゴは、結婚を許されないヴァチカンの枢機卿という身分でありながら、一人の男児を授かる。その子の名はチェーザレ・ボルジア。「罪の子」と呼ばれながら煌めく才智と美貌を備え、政争渦巻くヨーロッパの統一を夢見て歴史にその名を残した男の誕生であった。
1491年、16歳になったチェーザレは、ピサのサピエンツァ大学に在籍していた。学内ではメディチ家のジョヴァンニが率いるフィオレンティーナ団、好戦的なフランス団、そして、チェーザレ率いるスペイン団など、学生達が出身地毎に牽制し合っている。それは、実際にイタリア半島で覇権を争う諸国の王侯貴族達を見るようでもあった。
その頃、ヴァチカンでは教皇インノケンティウス8世崩御の時が迫り、次期教皇選を睨んだ派閥争いが繰り広げられていた。キリスト教の最高位である教皇の座を巡り、激しく争うロドリーゴと宿敵ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレ。チェーザレは、父を教皇の座に着かせるため、そして、その先にある自らの理想を実現するために頭脳戦に身を投じていく。
まずは選挙の鍵を握るピサの大司教ラファエーレ・リアーリオを籠絡すること。さらには、選挙権を持つ枢機卿の座を約束されているジョヴァンニの票を得るため、メディチ家との絆を深めることを画策するのだった。
それぞれの思惑が交錯する中、果たしてチェーザレは知と力の戦いに打ち勝つことはできるのか。

インタビュー

中川晃教さん
俳優 中川晃教さん
──ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』がいよいよ始動しますね。もともとは2020年4~5月に上演予定でしたが、緊急事態宣言の発令を受けて中止となってしまった作品です。2020年はどのあたりまで作っていたのでしょうか。

稽古場で“衣裳付き通し稽古”まで進めていました。2チームあったので、2チームそれぞれの。その後、もともと使っていた稽古場から、「盆」も入れられる大きな稽古場に場所を移すというところで公演中止が決まりました。音楽も、それまでピアノでやっていたものが、いよいよオーケストラと合わせるという段階。自分たちが稽古を重ねてきた芝居が、様々な機構と組み合わさり実感を持てるようになるというところでなくなってしまいました。

──どんな思いでしたか。

明治座の長い歴史の中で初めてオーケストラピットを動かすとか、色々な意味で関わる人の思いが集結し、生まれようとしていた作品だったので、まずはどうすることもできない現実、受け止めがたい現実を受け止めなければという思いでした。僕個人としても、公演中止が決まったあとも「あのシーンはこうだよね」「この台詞はもっとこうした方がいいかな」「あの歌はこういったことを伝えるべく書かれたんだな」とずっと頭の中に『チェーザレ』がありました。

──中川さんの中では、中止になったけれど絶対に次があると思っていたということでしょうか。

といいますか、あの当時はそれぞれの劇場や主催者がどう緊急事態宣言に対応していくのか、ひとつひとつ手探りで決めていた中だったから、もしかしたら緊急事態宣言が明けたら始動できるかもしれない、という期待もあったんですよ。本来のスケジュールより短くなるかもしれないけれど、キャスト全員は揃わないかもしれないけれど、幕を開けられるのかもしれないと。僕ら自身も全然先のことはわからなかったから、心の中はいつ再始動してもいいようにずっと準備しているような状態でした。ひと月半くらい経って「これはもう、すぐの上演は難しいんだろうな」とわかったので、そこからは意識を切り替えて目の前のできることを考えていきました。まずは7月に、緊急事態宣言で劇場を閉めた後、最初に幕を開けるステージとして僕のコンサートをやらせていただいたのですが、そこで「feat. ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』」という形で作品の楽曲も歌わせていただく、そちらに集中していきました。

──その時のコンサートもですが、その後も中川さんは折りに触れ『チェーザレ』の楽曲をコンサートなどで披露されていて、ずっと上演へ思いを繋いでいらっしゃるのだなと感じていました。そもそもの発端ですが、『チェーザレ』のミュージカル化を最初に聞いた時は、どう思いましたか。

僕は惣領冬実さんの原作も、史実のチェーザレ・ボルジアという人物も詳しくは知らなかったんです。でも明治座さんって、数多ある劇場の中でも特に歴史ある劇場のひとつです。その劇場が、音楽も演歌や歌謡曲、演劇も歌舞伎のような古典芸能を大切にしつつも、2.5次元やミュージカルといった、時代が求めるエンターテインメントを絶えず作り続けている。しかも、オリジナル作品を作ることに非常に情熱を持っているところが、とても魅力的。この作品も、明治座の方々が「オリジナルミュージカルを作りたい、この物語をミュージカル化したい」という企画を持ってきて、その熱い思いに賛同した形でスタートしました。

中川晃教さん
──では、中川さんが感じている『チェーザレ 破壊の創造者』という物語の魅力は。

舞台背景は、ヨーロッパが各国の覇権争いで揺れ動いている時代です。イタリア半島も色々な主権が入り組んでいる。でもかつてはローマ帝国という大きな帝国で、そこを治めていたカエサルという人物がいた。そのカエサルという名前をイタリア語読みするとチェーザレになります。そのことが、チェーザレという人間の持った壮大な運命を象徴していますよね。時代はルネサンスで、これは今まで正しいと思っていたものがそうではないと価値観が大きく変わった時代で、真実がどこにあるかというものが人々の関心となっていった時代。その、“時代”までもこのミュージカルで描かれている、見せていくというのはワクワクするところ。ただ楽しいとか美しいだけではなく、歴史の造詣を深めるような知的な面もある、そういう壮大な物語を上演することに対してのやりがいも感じます。

──チェーザレというと策略家、黒いイメージがありますが、惣領冬実さんが描いている彼はだいぶ違いますね。

頭が良い人だったのは確かだったようで、レオナルド・ダ・ヴィンチをそばに置いて、戦争にあたっての武器を設計させてもいた。そのダ・ヴィンチとものちに決別しているところなどから、チェーザレの冷酷さなども想像できますが、この物語ではそういったエピソード以前の青年期にフォーカスを当てています。その着眼点が惣領先生の面白いところなんだけれど、逆に言えば、ミュージカルとしてどうドラマを作っていくかというのは、演出家含めみんなで考えたところ。2年前の稽古でも、専門家の方から時代背景のレクチャーを受ける時間などもありました。物語自体はチェーザレたちが通っていた学校、ピサ大学が舞台。そこに集まる学生たちは、イタリアだけでなくフランスやスペイン、各地から集っていて、それぞれが学生団を作っている。学校の中にも分断されているヨーロッパの縮図、パワーバランスがある。その一方で彼らの親たちは覇権を争っていて、それぞれの思惑がある。その思惑は子どもである彼らの世代にも繋がっている。……という意味では、学生たちがメインだけれど割と政治にも直結していているのですが、チェーザレはあまりそういうものに囚われず、自分のビジョンに従って行動するタイプですね。

──そんなチェーザレをどう演じていきたいと考えていますか。

「私の母は娼婦――そして父は怪物だ」というインパクトある言葉が原作にありますが、私生児であるというバックボーンが彼を作っていると思います。アイデンティティを模索しているというところは重要になってくるかな。その彼が時代の中で“世の中の仕組み”を学び、様々なことを吸収していく。何のために支配者がいて、何のために国家が国家としてあって、何のために神の代理人たる教皇がいて……という模索は、つまりはより良い世の中、誰もが平和に暮らせる世界を夢見てのことだと思う。それは今の私たちの時代と重ね合わせることもできますね。そしてチェーザレは色々な人間と向き合う中で、確実に“思考”する。何と表現すればいいのかな……今という地点を、軽く踏まない。なぜそうなったかを考える人なんです。それはやはり、世の中を変えていく人間の前向きさ、ハングリー精神だと思います。彼の人生においては青春期の物語ですが、その時期の彼の中に、のちのチェーザレ像――“破壊の創造者”として後世に名を残していく人物像が見えてくるように、彼がなぜそうなっていったのかをしっかり描いていければと思っています。立ち向かうのはすごく難しいのですが、でもワクワクしています!

中川晃教さん
──そしてすでに色々なところで少しずつ中川さんが披露している楽曲も楽しみです。島健さんの書き下ろしですが、中川さんが思う、本作の音楽の魅力は。

この作品は人間の持っている生命力がテーマのひとつだと思うんです。どんな逆境の中でも、たとえ立ち止まらなければいけないほどの向かい風の中でも、その風が止まった一瞬を見逃さず歩き出さなければいけない。その“時を待つ”忍耐力、「来た、今だ!」という判断力、あるいは「どう次の一歩を踏み出すか」と思考する能力も、人間には必要。そういう、この時代の人間の中に渦巻くものが音楽にも表現されています。ミュージカルではある意味、ひとりずつのキャラクターが歌うナンバーが、それぞれの人生です。その様々な音楽たちがずっとアンダースコアで流れていたら、それはその時代を表現するものになりますよね。音楽が絶えず時代を発信しているし、それを受けて僕たちは芝居をする。だからこそ音楽に深みがないとミュージカルとして動き出さないのですが、その時代のうねりを島さんの音楽からは感じます。前回はオーケストラの色々な楽器で演奏される前に中止になってしまったので、島さんの音楽の本当の魅力を僕らももっと知りたいし、一緒にさらに深めていきたいと思わせてくれる音楽です。

──キャストもミュージカル俳優だけでなく、様々な分野で活躍されている方々が集まっていて、バラエティに富んでいます。

ミュージカル俳優に、2.5次元舞台で活躍している俳優、しかも壮大な歴史絵巻漫画が原作で、オリジナルミュージカル。今ある情報だけで盛りだくさん、どんなテイストになるんだろうと思いますよね(笑)。時代としては遠い話だけれど、政治と人の暮らしの関係性として見れば、誰もが理想を掲げているけれどなかなかその理想にたどり着けないもどかしさなどは、とても身近な話だと思う。そしてお客さまには、2.5次元舞台が好きな方、ミュージカルが好きな方、色々なエンターテインメントに触れてきた方、皆さんに立ち会っていただいて「明治座の作るミュージカルではこういうものが生まれるんだ」と楽しんでほしい。新しい出会いを僕は大事にしていきたいし、未知数な部分こそを楽しんでいきたいです。

──私たちも、2年待たされた分、期待を倍増して開幕を楽しみにしています。

台本も、2年前のものよりもっとテンポよくブラッシュアップされています。しかもこの2年の間で原作が完結しましたから、それはとても大きく影響してきます。荻田(浩一)先生の脚本、小山(ゆうな)さんの演出、島健さんの音楽、そして明治座という劇場。これらが有機的に繋がって、そしてこの2年という時間も有効的に作用して、2022年版『チェーザレ』に向かっています。僕はこの20年、ミュージカルの世界で様々な経験をさせていただいて今があるから、ミュージカルの世界に返せることを全力でやりたいと思っているのですが、そう思わせてくれるのは作品に魅力があるからこそ。この中にチェーザレとして声をかけていただいた身としては……月並みな言葉ですが、精いっぱい頑張ります!

(取材・文・撮影:平野祥恵)

キャスト&スタッフ

【原作】

惣領冬実
『チェーザレ 破壊の創造者』
(講談社「モーニング」所載)

【脚本・作詞】

荻田浩一

【演出】

小山ゆうな

【作曲・音楽監督】

島 健

【出演】

中川晃教

橘ケンチ(EXILE)

[スクアドラ ヴェルデ]
山崎大輝 
風間由次郎 
近藤頌利 
木戸邑弥(W キャスト)

[スクアドラ ロッサ]
赤澤遼太郎 
鍵本 輝 
本田礼生 
健人(W キャスト)

藤岡正明 今 拓哉 丘山晴己 横山だいすけ 岡 幸二郎

別所哲也

公演情報

公演名
ミュージカル
『チェーザレ 破壊の創造者』
会場
明治座
上演期間
2023年1月7日(土)~2月5日(日)
料金
定価 S席 13,000円 →《ご優待価格》S席 11,700円
1/21(土)のみ
S席 13,000円 → 11,250円
A席 8,000円 → 7,000円
B席左右 5,400円 → 4,850円
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