2025年で日本での上演は3度目の上演となる、大人気ミュージカル『フランケンシュタイン』。今回、メインキャストのWキャストに抜擢された小林亮太さん、島太星さんのおふたりに作品への意気込みをお伺いしました。
(左から)小林亮太さん、島 太星さん
「まじか!?大丈夫か…」という“大きな波”が押し寄せています
――出演することが決まったときはどんなお気持ちでしたか?
島 「人気作のメインキャストに決まった」というと、打ち上げ花火が上がったような天にも昇るような気持ちだろうと皆さん思いますよね。でも、僕はまったく逆で、大きな波が押し寄せてくるような「まじか!?大丈夫か…」という気持ちでいっぱいです。だから、自信を持って「やるぞ!」と思えるまでに少し時間がかかりました。今もまだ不安はありますが、それを取り除くためにも共演者やスタッフの皆さんと役作りを重ねていきたいと思っています。
小林 最初にマネージャーさんから伝えられたときは信じられなくて「間違ってないですか?」と確認したほど。自分が尊敬している中川さんとWキャストだし、大人気の大作ミュージカルのメインキャストを任せてもらえるなんてオファーをいただいたときは夢にも思っていませんでした。ただ、こんなチャンスは2度とないので「ぜひ、やらせてください!」と答えましたが、その後は島くんと同じく、徐々に徐々にプレッシャーの波が押し寄せて来てます。
――過去2回の上演で熱狂的なファンを生み出したミュージカル『フランケンシュタイン』ですが、この作品はご覧になっていましたか?
小林 作品自体は知ってたんですけど、劇場では観たことはなくて。中川さんと柿澤さんがWキャストの2020年版のDVDをいただいて観ていました。この夏、韓国で初めて生の舞台を観ることが叶って、この作品が持つ、魂から湧き上がるような熱いエネルギーを体感することができました。
島 僕はお話をいただいてから作品を知ることが多くて、今回もDVDをいただいて観ました。観終わって「あかん、これはやばいやつや!」と思いました。中川さんや加藤さんのことはもちろん存じ上げていたので、あのお二方と同じ舞台に立てるということの嬉しさとプレッシャー、どちらの意味でも「あかん!」と。北海道在住なのになぜか関西弁でしたね(笑)。そこからいろいろ作品について調べ始めて、過去の2回の上演でたくさんの愛溢れるファンを生んだ作品だということも知りました。
“スイッチ”が入った瞬間を見て心強いと思った
――今、お名前もあがった中川晃教さん、加藤和樹さんとのWキャスト、しかも島さんがおっしゃるように、日本での初演、再演では、熱狂的なファンを生み出した作品。プレッシャーは相当大きいと思います。
島 確かにプレッシャーはあります。でも、今回の作品で演出を手掛ける板垣恭一さんは2年前にご一緒したことがあって、そのときに僕の芝居の力を最大限に底上げしてくれた方。いつかまた板垣さんと一緒にできたらと思っていたら、こんなにも早く実現したのも嬉しいですし、また新たな自分の中で眠っている何かが板垣さんの演出で呼び起こされるんじゃないかとワクワクする気持ちもあります。
小林 僕ももちろんプレッシャーは感じていますが、太星くんとのペアなのが本当に心強いですね。先輩に対して失礼な表現かもしれませんが、普段は可愛らしくてチャーミングな人なんですよ。でも、板の上に立つと纏う空気が変わる人。先日もビジュアル撮影があって役のメイクをして衣裳を着たら、スイッチが入って“怪物”になったんです。それを目の当たりにして、そんな彼と一緒なのは演じる上で、本当に心強いと思っています。
島 僕も亮太くんと一緒で本当によかったよ。彼はひとつ年下ですが、嫌になるくらい(笑)、本当にしっかりしているんです。記者会見や取材で答えるのが僕は苦手なので、事前にマネージャーさんに確認して、夜な夜な考えて練習してたんです。しっかり受け答えしようと思ったら、亮太くんの話し方になっていた(笑)。真似してみて、やっぱ「これはモテるわ、かっこいいわ」と思いましたね。結局、今日の会見では練習の成果は発揮できませんでしたが(笑)。
小林 いや、全然です…。実はさっきも緊張して、頭の中が真っ白になってたし。
島 こんなふうに優しくフォローしてくれるんです。でも芝居ではしっかり自分の中に芯があってじっくり考えている亮太くんとペアなのは本当に嬉しい。これから本格的に稽古が始まりますが、お互いに話して話して、一緒に作り上げていきたいと思っています。
中川さんから音楽に対する敬意を学ばせてもらっている
――Wキャストで演じる中川晃教さん、加藤和樹さんはどんな印象でしたか?
小林 中川さんはあれだけのキャリアがありながら、なんて柔らかい方なんだと思いました。それに僕とはまったく思考や発想が違う方。ずっと音楽をされてきているので、アーティスト的な目線といいますか、音楽に対する敬意の表し方も学ばせてもらっていますね。芝居として心を優先した気持ちもありながらも、ミュージカルなのでブランドン・リーさんが作った音楽の旋律の美しさは伝えなくてはいけない。そこが醍醐味であり難しさでもあるんですが、そういう部分でも中川さんの表現から学ぶことばかりですし、これからの稽古でもっともっと学びたいと思ってます。
島 最初は加藤さんってめちゃくちゃ怖い人なのかなと思ったんですよ、声も低いし、笑わないし。でも、韓国に舞台を観に行ってご一緒したら、冗談も言うし、僕たちの悩みや心配事もよく聞いてくれて、めちゃくちゃ後輩思いの優しい先輩でした。今日の記者会見でも、バックステージで緊張する僕たちを、笑顔を通り越して変顔なんかもして、リラックスさせてくれましたし(笑)。でも、作品に対しては真摯で真面目。これから役作りで悩んで、自分で解決できなさそうなくらい“消化不良”になったときは加藤さんにどんどん相談しようと思ってます。
初めての僕らだから生まれる感覚を大事にしたい
――続投のおふたりが演じる『フランケンシュタイン』はご覧になったうえで、小林さんと島さんは、それぞれの役をどう解釈されていますか?
小林 中川さん、加藤さんという、今回で3回目になるお二人と一緒に稽古できるのは、本当にありがたいし、チャンスだなと思っています。役に対する理解度は僕たちよりも圧倒的に深いし、公演を重ねたからこそたどりついたものを間近で見ることができるんです。そのうえで僕らの解釈で作っていけたらいいなと思っています。時代背景を考えるとフランケンシュタインやアンリは、今の僕たちよりもずっとしっかりしていただろうし、そうじゃないと生きていけない時代だったはず。だから、太星くんや僕が演じるときは少し背伸びというか重厚感というか、必要な部分もあるかもしれないと思っていて。でも、一方で僕らの等身大で演じてもいいんじゃないかと思う部分もある。作品ではフランケンシュタインとアンリの出会いから描かれているわけだし、今回初めて演じる僕らだから生まれる感情や感覚を大事に演じたいなと思っています。
島 過去の映像や台本から、アンリは喜怒哀楽を表に出さないクールな印象だったんです。だから、僕もクールに抑えて歌ってみたら感情をうまく乗せることができなくて。演出の板垣さんに相談したら、「出しちゃっていいよ、もっと感情をぶつけていいよ」と言われたのをきっかけに、自分は他の方が作ったアンリにとらわれ過ぎていたと気づくことができた。それで少し自分のアンリが見えた気がしました。
2時間が本当にあっという間。覚悟して観に来て!
――最後に、まだミュージカル『フランケンシュタイン』を見たことのない方、そして2017年、2020年版を見てファンになり、今回も見たいと思っている方にメッセージをお願いします。
小林 “フランケン”ファンの方には、僕らなりの解釈で作る舞台を見て「こういう『フランケンシュタイン』もありだね!」と思ってもらえるように、稽古でトライ&エラーしながら模索していきたいと思っています。初見の方は、おそらく新生活が始まる4月で、これから新しいことを頑張ろうと思っているときに、かなりダークな世界で面食らうと思うんです。でも、たとえば希望が失われてどん底だったとして、そこからどう一歩を踏み出すかといったところや、愛や勇気を持って行動する人々の姿は普遍的なテーマで、きっとご覧になる方も胸打たれるところだと思います。ダークではありますが、熱いものをお届けするので、ぜひ見に来てください。
島 何度もご覧になっているフランケンシュタインファンの方には、20代の僕らなりの熱量溢れる、また違った世界を見てもらいたいです。「あのふたりもよかったね」と思ってもらえるように、誠心誠意、作品と向き合っていきたいと思っています。見たことない方の中には、フランケンシュタイン暗くてシリアスなシーンが続いて眠くなるんじゃ…というイメージの方もいるかもしれません。でもまったくそんなことはなくて、音楽も素晴らしくて壮大で、ストーリー展開も起伏があって、一瞬も目が離せない舞台です。本当に2時間が一瞬に感じるくらいあっという間なので、もう本当に覚悟して観に来てください!
(取材・文/幸山梨奈)
(撮影/森浩司)
■小林亮太
ヘアメイク 田中宏昌(アルール)/スタイリスト 石橋修一
■島 太星
ヘアメイク YAHAGI RITSUKO/スタイリスト 小林洋治郎