人間味や生きる力に満ちたストーリー!
観終わったあとにきっと希望を抱ける作品です。
日本ミュージカル史上初めて、スペイン最大の画家ゴヤを題材にした作品、ミュージカル『ゴヤ -GOYA-』。演劇界を牽引するG2が「海外へ輸出できるオリジナルミュージカルをつくりたい」と温め続けた企画が、演出に鈴木裕美、作曲・音楽監督に清塚信也を迎えてついに実現。動乱の時代に、混沌とした社会の中で波瀾万丈な人生を送ったゴヤを演じるのは、スペインと縁の深い今井翼さん。舞台復帰後では初主演となる今井さんに、この作品への思いや見どころなどを伺いました。
俳優 今井翼さん
――出演が決まったときのお気持ちを教えてください
スペインを代表する画家のゴヤを題材にしたミュージカルということで、一体どんな作品になっていくんだろう…と思いました。ゴヤの年齢や彼が生きた時代背景などを考えると、なかなか想像しづらい部分もありましたね。でも僕にとってスペインは、フラメンコをきっかけに大好きになった国。ゴヤの時代とはもちろん違いますが、実際に行ったことのあるアンダルシアやマドリードの景色や空気感は今も鮮明に浮かび上がってきます。プラド美術館で数々の名画と出会い、感銘を受けたことも。そんなスペイン&ゴヤを題材に、すばらしい製作陣と一緒にオリジナルミュージカルをつくっていけることは本当に楽しみですし、皆さんの想像を超えるような作品になるのではないかと思っています。
――台本を読んだとき、この作品に対してどんなことを感じましたか?
動乱の時代ということやゴヤの絵のイメージから、最初は暗黒で難しいストーリーなのかなという印象を持っていました。ところが台本を読み終えたあと、何だかすごく希望を感じたんです。2020年はコロナ禍で世界中が大変な状況となり、いろいろな困難に直面した年だったと思います。そんな中で2021年にこの作品をやらせていただくことになったのは感慨深い。観てくださる方々に少しでも希望を抱いてもらえる作品にできればと思いましたし、僕自身にとっても演じる上で活力をもらえる作品になるのではないかという期待をすごく感じました。
――ゴヤについてはどんな印象をお持ちですか?
台本を読み切り、今は自分なりにゴヤに関する資料を取り寄せて調べているところなのですが、ひとことで言うとゴヤはすごく破天荒なイメージ。若い頃は出世欲の固まりで、人間味あふれる人物でもあります。そして、スペイン宮廷画家のディエゴ・ベラスケスを尊敬し影響を受けながらも、型にはまらず独自の発想で絵を描く画家。単に対象をきれいに描くのではなく、内面も含めた「人」というものを題材にするという思考を持った画家なのかなと思います。
ゴヤの作品の中では、絵の片隅の暗闇に彼自身が描き込まれている「カルロス4世の家族」が印象に残っています。また、今回のミュージカルにも登場しますが、ゴヤはアルバ公爵夫人に彼女の裸の絵を依頼されたのに、服を着た絵を描くんですね。それも彼ならではの思想があったからこそで、そういう点が魅力的だなと思っています。
ゴヤに限りませんが、「その人にしかない独自の発想を形にするアイデア」に、僕はとても惹かれるんです。
――復帰後初の主演作になりますね。意気込みを教えてください
復帰後、ミュージカル『ゴヤ -GOYA-』という作品の舞台の中心に立つことができるのは、とてもありがたく感謝しています。もちろん主演というプレッシャーはありますが、作品は周りの皆さんとともにつくり上げていくもの。共演する役者さんや製作に関わる方々に導いていただくことも多々あります。2月から稽古が始まるので、芝居の方向性などが見えてくるのはもう少し先になると思いますが、それまでに自分ができる準備はしっかりとして稽古に臨みます。
舞台でも映画やドラマでも、最初にその現場に入る時はすごく緊張するんです…。良い緊張感は保ちながらも皆さんと打ち解けて、お客さまが喜んでくださる作品をつくっていく過程を楽しみたいですね。
――クリエイター陣もキャストも豪華な面々がそろいましたね
原案・脚本・作詞のG2さん、演出の鈴木裕美さん、初めてミュージカル曲を作曲される清塚信也さん。すばらしい芸術家の方々に支えていただき、一緒に作品をつくれるというのは、僕にとってまた新たな経験となります。鈴木さんと少しお話する機会があったのですが、鈴木さんも僕も「観た人が希望を抱ける作品にしたい」という同じ思いを持っていました。ゴヤは葛藤や苦難の末に光を見出していきます。僕自身も、これまでたくさんの自問自答をくり返しながら、無理をして乗り越えるのではなく自分とうまくつきあっていこうという思いになれた。そして、今の大変なご時世も、うまく向き合って進んでいくことが大事なのかなと。そんなこともお話させていただきました。
清塚さんとも先日お会いしたのですが、とても気さくな方という印象を受けました。今はまだ清塚さんがどんな曲をつくるのか、そしてその音楽にどんな振り付けがされるのか未知の状態ですが、すごくワクワクしています。
それから、今作でキムラ緑子さんと共演できると聞いたときはびっくりしたし嬉しかったですね。先日の撮影で初めてお会いしたとき、緑子さんの魅力がオーラとしてバンバン伝わってきました。これから稽古の中で交流できるのが楽しみです。
――最後に、作品の見どころとお客さまへのメッセージをお願いします
フランス革命時代のスペインの人々を描きながらも、現代的なアプローチをするというオリジナルミュージカルなので、前例のない型破りな作品になると思っています。出世欲が強く我が道を突き進んでいたゴヤが聴力を失い、すべてがふさがれた世界の中で自暴自棄となる。それでもやがて宮廷画家の頃には思いも寄らなかった発想で壁画を描き、力強く生き抜いていく。そんなゴヤから、演じる側も見る側も希望をもらえるはず。モノクロだったものに次々と色が足されてカラフルになるような…そんな感覚を味わえる作品になっていくと思います。「観に来て良かった!」と清々しい気持ちで帰路につける作品を目指しますので、先の見通しがつかない状況が続きますが、ぜひ1人でも多くの方に観ていただけるように願っています。
ヘアメイク:山田佳苗(アルール)/
スタイリスト:小山田孝司/
衣装協力:ヨウジヤマモト
型にはまらない、エネルギッシュなミュージカル。
希望やエネルギーを持ち帰ってください!
日本のミュージカル史上はじめて、スペインの画家・ゴヤを題材にした「ゴヤ -GOYA-」。4月の日生劇場での公演を前に、東京都内で製作発表記者会見が行われました。登壇したのは原案・脚本・作詞のG2、演出の鈴木裕美、作曲・音楽監督の清塚信也という豪華なクリエイター陣と、出演者の今井翼、小西遼生、清水くるみ。それぞれに、作品の見どころや役への意気込みなどを語りました。
――G2さん、鈴木さん、清塚さんの現在のお気持ちや、作品への思いをお聞かせください
G2 [原案・脚本・作詞]
8年ほど前にゴヤの人生のダイジェストを知る機会があり、ものすごく魅せられました。スペインの動乱の時代、ものごとの価値観がどんどん変わっていく時期。その中で彼が変貌していく様にとても魅力を感じ、脚本を書きたいと思ったんです。演出の鈴木裕美さんには書く前からいろいろと相談をさせていただきました。ようやく書き上がり、音楽とともに歌詞の修正も終わり、僕自身はどちらかというと一段落した状態。今は、鈴木さん率いる優秀な寮に自分の子供を預けたような、親の気持ちでおります(笑)。ときおり稽古の様子を映像で拝見するのですが、大変エネルギッシュなミュージカルになる予感がしています。初日の幕が上がるのを、僕が一番楽しみにしているんじゃないかな。
鈴木裕美 [演出]
G2さんから演出をしてほしいと誘われ、非常に光栄に思いながらお引き受けしました。そして私が清塚さんにお声をかけて、このカンパニーが成立しています。新作ミュージカルというと、漫画や小説や映画が原作であったりと、何かしらとっかかりがあるところから製作することが今は比較的多いと思います。でもこの作品はまったくのゼロから作っているミュージカル。そこに関われることに喜びを感じています。稽古場も、非常に“ものを作る喜び”にあふれています。G2さん、清塚さん、振付の上島雪夫さん、フラメンコ振付の佐藤浩希さんと、本当の意味でのコラボレーションが起こっているんです。例えばダンスに対して清塚さんがその場で曲を作り、それならば…と上島さんや佐藤さんが踊り出し、G2さんは「だったら僕は歌詞を変える」と。誰も否定的なことを言わなくて、ポジティブな会話だけで打ち合わせが進んでいきました。そのように作られたミュージカルを、ぜひ皆さん楽しみにしていただければと思います。
清塚信也 [作曲・音楽監督]
まずは、こんなに“芸術的な時間”を過ごせていることに心から感謝しています。コロナ禍ということでリモートやネットを駆使して準備をしてきましたが、そんなことはものともしない、アーティスティックな話ができました。時間を忘れるほど楽しく、そんな思いに浸ったのは学生の頃以来じゃないかと…。とても集中して曲作りをさせていただきました。そして、今井翼さんをはじめキャストの皆さんはすごいスキルとタレント性をお持ちのエキスパート。本当に、この作品は各々が絶対ゆるぎないものを持ち寄って作り上げる、ものすごいエンタメだと思います。また、コロナ禍でこの作品が上演されるというのは、それ自体が意味のあることだと思えてなりません。波乱万丈な人生を歩んだゴヤを、今井さんが復帰後に演じるというのも何か因縁を感じています。ぜひ皆さんご期待ください。
――今井さん、小西さん、清水さん、出演が決まった際はどんなお気持ちでしたか?
今井翼
お話をいただいた時は、すごく嬉しかったです。スペインとはこれまでもさまざまなご縁があり、フラメンコがつないでくれた今回の新たな出会いを大事にしたいと思いました。昨年、活動復帰させていただき、さまざまな経験を経てこのような大役をいただいたので、本当に感謝しています。
小西遼生
とても愛情深いG2さん、鈴木さんのお二人がタッグを組んでものを作るという場に参加できることが、すごく嬉しいです。さらに、今や話題沸騰の清塚さんが本気でミュージカル曲を作るという、その舞台に立てるのもすごいこと。そして、同世代でずっと見てきたスターの翼くんと共演できるので、「コニツバ」と呼んでいただけるように頑張りたいです!
清水くるみ
初めての日生劇場で大役をいただき、びっくりしました。正直、何かの間違いじゃないかな…と(笑)。素晴らしい方々に囲まれているので、実は今もちょっと緊張しているんですけど、足を引っ張らないように頑張らなきゃという気持ちです。私も今井さんや小西さんと同じで、嬉しかったです!
――ご自身が演じる役に対する思いを教えてください
今井翼
日本の次に愛するスペインを舞台に、世界を代表する画家であるゴヤを演じられることを本当にありがたく思います。紆余曲折のゴヤの人生を丁寧かつ大胆に演じていきたいと思っています。今回こういった機会をいただき、自分なりにいろんな資料を見て勉強をしていく中で、ゴヤの“我が道をいく熱き魂”にとても共感を持ちました。自分なりに年表を作っては、彼がどうやって生きたかに思いを巡らせたりもしました。聴力を失ったからこそゴヤが見出したもの、彼にしかない感性というものを大事にしたいと思っています。ゴヤが残していったものを今僕が表現できる…こんなにありがたいことはないですね。
小西遼生
僕が演じるサパテールは、史実にも残っているゴヤの親友です。作中でゴヤと手紙をやり取りするシーンが多いのですが、実際にゴヤがサパテールにあてた手紙も残っており、それはまるでラブレター。君がいればあとは何もいらない…みたいな内容が書いてあるんです。絵を描くことや出世することにどん欲なゴヤが、ものすごく熱い思いを傾けるという役ですし、僕と今井さんはほぼ同世代でもあるので、稽古を通して、親友という言葉を超えた心と心の通った関係を作れたらと思っています。
清水くるみ
私はゴヤの妻であるホセーファを演じます。ゴヤとサパテールの関係性が強く、ゴヤの愛情はサパテールの方に傾きがちですが、健気に夫を支えるという役どころです。歴史の資料などにはホセーファに関する詳しい記載があまりなくて、まだどんな役になっていくのか探っている最中です。でも、(製作発表記者会見で)衣装を着てみてインスピレーションをいただいたので、これからの稽古も頑張っていきたいと思います。
――今井さんはこの作品の魅力をどのように感じていますか?
今井翼
ゴヤというと、晩年の作品からどうしてもモノクロームな印象があると思いますが、今回は芸術家ではなく“人間ゴヤ”に焦点を当てた作品。とてもコミカルなシーンもあり、ゴヤの人間味あふれる熱い部分を見ていただけます。うねるような彼の人生にも似たストーリー展開も魅力です。これまでお芝居をさせていただいた中で、こんなにもコミカルなお芝居は初めてかもしれません。僕自身が楽しんで稽古をさせてもらっています。また、今回は1ヶ月半という稽古期間があり、じっくりと取り組むことができています。鈴木さんがとても緻密にアドバイスなどをくださり、その都度、自分なりに解釈から咀嚼の過程を踏んで進んでいます。あっという間に本番を迎えることになると思いますが、とにかくベストを尽くします。良い作品と巡り合って劇場を出た後の、形容し難い喜びってありますよね。それをお客様に感じていただきたいと思いますので、ぜひともご期待ください。
――特技のフラメンコやスペインでの経験を舞台にどう活かしますか?
今井翼
今回は芝居から派生したフラメンコを踊らせていただきます。15年近く支えてくださっているフラメンコの師匠、佐藤先生が振付と出演をなさるので、大変心強く思っています。フラメンコというのは、怒り、喜び、悲しみといった感情が体の芯から湧き上がってくる舞踊なんですよね。そして青年時代のゴヤはほとばしるような野心を持っている。そういったものをしっかりと連動させていきたいと思っています。本来であればこの作品の準備期間を迎える前に、あらためてスペインを訪れたいと思っていましたが、世界中が大変な状況にあるため叶いませんでした。かつてスペインで経験したことや感じたことを今一度振り返りながら、においや空気感を表現していきたいです。
――鈴木さん、清塚さんから見た今井さんのゴヤの印象は?
鈴木裕美
ミュージカルの主人公をなさる方は、比較的声が高めのテノールであることが多いんです。今井さんと初めてお話しした時、声がとっても魅力的で、ゴヤにすごく合うなというのが第一印象でした。エネルギッシュであるというところもぴったりです。また、ゴヤという人は社会や世界に向けた怒りが感情の中で大きなパーセンテージを占めています。もちろん慈しみなどの感情もあるのですが。私の個人的な感想としては、今井さんもさまざまな感情の中に怒りというものもしっかり持っていて、そこがゴヤを演じる上でとてもいいと思っています。
清塚信也
僕も今井さんの第一声を聞いて、低い音がしっかり出る方だと思いました。日本人で主役を張る役者さんだと、こんなに低音まで出る人はなかなかいない。これはゴヤにぴったり!音楽的にも幅が広がる!と、すごくときめいたのを覚えています。今井さんはとても謙虚な部分と、これは絶対譲れないという意志の強い部分と、ほどよく鈍感な部分と、可愛らしいところと…(笑)、いろんな面があるので、その魅力がゴヤを通じて出るんじゃないかなと思います。
今井翼
僕、本当に鈍感なんですよ(笑)。よく言えばマイペースということで、よろしくお願いします!
――最後に、お客様に向けて今井さんからメッセージをお願いします
今井翼
日本中、世界中が大変な状況の中で、表現者として舞台に立てること、そこに向かっていけること、その喜びを日々かみしめています。今回は僕にとって思い入れのある日生劇場と、初めて立つ名古屋の御園座での公演となります。ゴヤが自分の病と向き合い、自分の足で上りつめていくそのエネルギーを、お客様一人ひとりに感じていただきたいです。時代を超えて人に訴えかけるプラスのエネルギーを、皆さんに少しでも持ち帰っていただければ嬉しいです。また、清塚さんがスペインに寄り添って作ってくださった音楽も大きな見どころとなります。これまでにはない、型にはまらない新作ミュージカルにご期待ください。