初春海老蔵歌舞伎
イントロダクション
歌舞伎の灯を絶やさず、新しいことに挑戦。
「海老蔵」と「歌舞伎」の名を冠した公演を開催!
新型コロナウイルスという未曾有の災禍にありながらも、歌舞伎の灯を絶やさないという思いから、市川海老蔵の名を冠した『初春海老蔵歌舞伎』を開催。海老蔵にとって自身の名に「歌舞伎」がついた初めての公演であり、また東京での長期の歌舞伎公演は2020年1月新橋演舞場公演以来1年ぶりとなります。 演目は、新年の初芝居にふさわしく華やかな『春調娘七種』、成田屋のお家芸である歌舞伎十八番の内『毛抜』。海老蔵は『毛抜』で、愛嬌と知性を兼ね備えた捌き役、粂寺弾正を演じます。また、お正月の特別企画「お年玉」として、舞踊の名作『藤娘』で市川ぼたんが、弁慶と牛若丸の出会いを描いた『橋弁慶』では海老蔵と堀越勸玄が親子で踊ります。
東京を元気にする『初春海老蔵歌舞伎』にどうぞご期待ください!
演目
春調娘七草
父を工藤祐経に闇討ちされた曽我五郎と十郎の兄弟は、亡父の恨みを晴らそうと静御前とともに祐経の館にやってきます。仇を討とうと兄弟は勇み立ちますが静御前は二人をなだめ、たおやかに踊ります。続いて春の七草の名が読み込まれた長唄に乗せて三人は扇を俎板(まないた)と擂粉木(すりこぎ)に見立てて七草を打ち始める様子を見せていきます。やがて、時節を待って本懐を遂げようと思い改めた十郎と五郎は静御前とともに国土安穏や天長地久を祈り、新しき春を寿ぎめでたく舞納めます。
歌舞伎十八番の内 毛抜
小野小町の子孫、春道の屋敷を訪れた粂寺弾正。主人文屋豊秀への輿入れが遅れている姫君錦の前の様子をうかがいにやってきましたが、家宝である小町の短冊が盗み出されたうえ、鏡の前は原因不明の病にかかり伏せってしまいます。髪の毛が逆立つ姫の奇病を観て考え込んだ弾正ですが、手にした毛抜がひとりでに踊り出したことから、姫の奇病の仕掛けを見破り、さらには悪人から小町の短冊も取り戻すと、意気揚々と屋敷を後にするのでした。
藤娘
松の大木には、藤の花が絡んで咲き誇っています。そこへ、美しい娘姿の藤の精が現れます。藤の精は花と戯れるように可憐に踊ると、いつしかその姿を消すのでした。
橋弁慶
武蔵坊弁慶は、京の五條橋で武芸に優れた少年が現れると聞きました。そして五條橋に向かった弁慶の前に牛若丸が現れます。弁慶は薙刀をふるって牛若丸に挑みますが、ついに打ち負かされてしまいます。
インタビュー
歌舞伎を通して少しでもお正月らしさを感じ、
元気になっていただければうれしく思います。
世界中でエンターテインメントの灯が翳る中、松竹では新橋演舞場『初春海老蔵歌舞伎』を2021年1月3日(日)〜17日(日)まで上演。これまでも毎年のように新橋演舞場での1月歌舞伎公演に出演し、その思い入れも深い市川海老蔵さんが、初めて自身の名に「歌舞伎」がついた公演に挑みます。娘の市川ぼたんさんの出演や、息子の堀越勸玄くんとの親子共演も注目を集めています。『毛抜』で粂寺弾正、『橋弁慶』で弁慶を務める海老蔵さんに、本公演への思いなどをお聞きしました。
歌舞伎俳優 市川海老蔵さん
「歌舞伎」の上に俳優の名前がつくのは、前例があったのかなかったのか、詳細はわからないのですが、初めてのことだと聞いております。「海老蔵歌舞伎」と聞くと、奇をてらったことをするのではないか、何か新しいことをするのではと思われるかもしれませんが、本公演では古典芸能を追求します。市川ぼたんや堀越勸玄を含め、これから日本の伝統文化を支えていく若い世代の方々を教育しながら、きちんと見守るということをコンセプトに、今回は『初春海老蔵歌舞伎』という名称にさせていただいたのだと思っています。
昨今の新型コロナウイルスなどさまざまなことで、皆さま苦難の日々を過ごしていらっしゃいます。以前のような喜び、楽しみ方、遊び方といったことがなかなか困難な状況の中でやるからには、市川家の歌舞伎十八番で元気の出るような演目は何だろうと考えた結果、『毛抜』を選びました。私が演じる粂寺弾正は、勇猛かつ頭脳明晰でありながら、男の余裕や色気があり、『毛抜』はそんな弾正がお家騒動を解決していく荒事(あらごと)です。そしてまた、市川家に代々伝わる5つの型の見得をご覧いただけます。2020年はいつもと違うクリスマスや大晦日になると思いますが、1月3日から始まる『初春海老蔵歌舞伎』で少しでもお正月らしさを感じていただければ。
『藤娘』は六代目尾上菊五郎が作り上げた花の精の踊りで、伝統的な舞踊。女方の舞踊の中ではかなり高度な技術や体力、さまざまなものが必要となります。市川ぼたんの「歌舞伎の舞踊家、日本舞踊家として精進したい」という気持ちを汲み、『藤娘』を選びました。こういう藤の精が存在しているんだなと、脳内でおのおの自由に想像を膨らませながら観ていただけると、より『藤娘』を楽しめるのではないでしょうか。
『橋弁慶』に関してはいろいろ考えました。勸玄が一人で踊る演目の方がいいか、私がふたつの演目に出ていいのか…とか、さまざまです。しかしやはり今やるのが最善と思い、決めました。『五條橋』という有名な物語の中で、牛若丸(後の源義経)と武蔵坊弁慶が主従三世の契りを結ぶという場面を、今作では舞踊でご覧いただきます。今後、私が『勧進帳』で武蔵坊弁慶を務めるおりには、倅(勸玄)が源義経を務めるときがいずれ来ますので、ぜひその伏線として観ていただければ。この『橋弁慶』という布石があるからこそ、『勧進帳』での主従の関係につながる…そういうドラマもあると思っております。
本来でしたら2020年5月〜7月は襲名披露公演を予定しておりましたので、師匠と弟子または父と子という時間はおそらく持てないという覚悟がありました。ところが、4月から緊急事態宣言が解けるまでの間は、朝から晩までずっと子どもたちと一緒に生活をすることになったわけです。その中で、私が歌舞伎俳優で多忙なゆえに、それを言い訳にして子どもたちの本当の姿を見れていなかった部分もあると気づきました。二人がもっと幼いときよりも、少し笑顔が減ったとも思いました。これではいけない、と。ふざけた話から真面目な話、難しい政治の話までいろいろと会話をしたり、一緒に遊んだりするうちに、親子の絆が深まり、笑顔が元に戻っていったように思います。やはり子どもは子どもらしくいてもらうのが一番ですね。そんな1年の中で子どもたちが変わったなと思うのは、栄養バランスをちゃんと考えて食事をとるようになったことです(笑)。
私にとっては、自分自身のことよりも勸玄の八代目市川新之助襲名のことや彼の気持ちの方が重要です。親心ですね。私は7歳のときに七代目新之助を襲名しましたが、世界中が先のわからない状況なので、来年なら倅は8歳、再来年なら9歳…とどんどん年齢を重ねていきます。倅の襲名をどういう風にとらえるべきなのかの方に思いがいくというのが本音です。あえて私自身のことを言うならば、いつどのタイミングで襲名しても構わないという気持ちでいます。10歳のときに襲名していようと、20年後30年後であろうと。
非常に難しいですよね…。先の状況が見えないので、大見得切れないじゃないですか。個人的には、新型コロナウイルスが終息し、世の中の経済がどんどん回り、皆さまが元気になり、そのうえで我々エンターテインメントや舞台芸術、伝統文化の役者陣が活動できると思うわけです。とにかくそこを目指して、ひたすらコツコツと、今与えられている責務を果たして進んでいきたいです。そして、何事にもとらわれず風のように1年間過ごしていきたいという思いでおります。
いろいろな方のご尽力でこのような公演ができますことは、本当にありがたいと思っております。滞りなく初日を迎えて、無事に千穐楽になることを今は祈るばかりでございます。12月の頭にチケットが発売となりましたが、今のところかなり多くの方が来てくださると聞いております。このコロナ禍の中で、「海老蔵を、海老蔵の娘や息子を観てみよう」「歌舞伎を楽しみたい」というお気持ちになってくださったこと、心から御礼申し上げます。俳優陣、裏方、すべての関係者が心をひとつにして最大限の感染対策を行ってまいりますので、どうかお気をつけて新橋演舞場までお越しください。
公演終了
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平日=11:00~15:00 土日祝=10:00~15:00(時短営業)
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