INTERVIEW
人間の愛と闇が浮き彫りになるような
見応えあるミュージカルをつくり上げたい
多彩で魅惑的な音楽、そしてスリルとロマンスが重なりあう物語で観客を魅了するミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』。主要な役どころの外科医ダニエル(木村達成・小野賢章)、刑事アンダーソン(加藤和樹・松下優也)、殺人鬼ジャック(加藤和樹・堂珍嘉邦)はWキャストとなっており、ステージ上でどんな化学反応が起きるか期待が高まります。
今回は、ダニエル役を務めるおふたりにインタビュー。ミュージカル作品での活躍が目覚ましく、昨年はストレートプレイに主演も果たした木村達成さん。そして、映画『ハリー・ポッター』シリーズのハリー役をはじめ、数々のメインキャラクターを演じる声優であり俳優の小野賢章さん。作品や役に対して、それぞれが今感じていることを伺いました。
俳優 木村達成さん
声優・俳優 小野賢章さん
―― 韓国で人気を博した『ジャック・ザ・リッパー』に出演が決まった時のお気持ちは?
木村達成(以下、木村) まず最初に、「また日生劇場の舞台に立てる!」と思いました。グランドミュージカルのデビューが日生劇場だったので、その劇場に帰ることができるのはとても感慨深いですね。そして、K-POPをはじめ韓国のカルチャーがかなりブームになっているなか、韓国で大人気のミュージカル作品に挑戦できることがうれしいです。時代の流行に乗り、こういった作品と出合うことでまだ知らない自分をどんどん発見できればいいなと思います。
小野賢章(以下、小野) ミュージカルに頻繁に出ているわけではないので、最初は正直なところ不安もありました。声の仕事との兼ね合いで、ダンスの稽古時間を十分にとることが難しいのですが、どうやら今回はダンスがそんなに多くないようで。それならぜひ挑戦してみようと。韓国はエンターテインメントにとても力を入れていて、プロフェッショナルなイメージがあります。ミュージカルもクオリティの高い作品がとても多いですよね。それを日本人キャストでやるのはプレッシャーもありますが、日本でやるからこそ伝えられる細かいニュアンスのようなものを大切にして、僕にできることをしっかりやっていきたいです。
―― 未解決事件の切り裂きジャックがモチーフの作品について、どう感じていますか?
木村 誰もが知っているような未解決事件ですよね。とても興味深いですし、未解決ミステリーというのは、僕の中の少年心をくすぐります。自分自身もドキドキしながらつくっていけそうですね。
小野 連続殺人事件という題材や人間の闇を扱ったストーリーですが、やはりエンターテインメントですから、お客さまはスリルを感じながらも楽しく観られるものになると思います。普段会っている友達でも、実は裏の顔があるんじゃないか…なんて、観たあとにいろんなことを考えてしまうような、人間の二面性が見える作品になったらいいなと思います。
―― 闇に落ちていく外科医ダニエル役の印象や、演じる意気込みを教えてください
木村 昨年、演出の白井晃さんとご一緒した音楽劇『銀河鉄道の夜2020』のジョバンニも、帝国劇場ミュージカル『エリザベート』のルドルフも、どんどん闇に落ちていく役でした。実はファンの方の声でもよく聞くんですよ、「達成を闇に落としてくれ」と(笑)。だから皆さんには、今回また新たな闇に落ちる木村達成が観られると期待してほしいところもありますね。ダニエルは純真な好青年ですが、愛を追い、やがて闇に落ちていく。感情の振り幅がとても大きいので、それがどこまで自分を苦しめるのか、そして白井さんの演出でどこまで追い込まれるのか…。少し怖くもあり、楽しみでもあります。
小野 実は僕、声の仕事の方でも“闇落ち”する役をたくさん演じさせていただいているんですよ。闇とご縁があるのかな(笑)。今回演じるダニエルは純粋でまっすぐなキャラクターで、それゆえに闇に落ちて行ってしまいます。その二面性をしっかり出したいですね。いきなり変わるのではなく、じわじわと、気づいたら闇に落ちていた…。そんな風に、闇落ち過程を丁寧に演じていければと思います。
―― 稽古に向けて楽しみにしていることはありますか?
木村 すでに共演したことがあるキャストの方々にとっては、木村達成は“うるさいガキ”というイメージが強いと思うんです。そんな印象を払拭していきつつ、「軸にあるものは変わらないけど、人として成長しているな」というところを見せたいですね。先輩の力をお借りしながら頑張ります。加藤和樹さんに「ちょっと助けて!」と言える安心感もあるし、『エリザベート』で父役だった田代万里生さんや、演出の白井さんに頼ることもあると思います。同じ役を演じる賢章くんとも顔見知りなので、悩んだら一人で抱え込まずに、みんなで良い作品をつくっていきたいです。
小野 どの現場でもそうですが、初めて稽古する時はお互い探り合いなので、楽しみでもあるし緊張もすると思います。みなさんの雰囲気や、白井さんがどんな稽古をしていきたいのかなど、できるだけ早く汲み取れるようにしたいですね。初共演のキャストの中で特にドキドキワクワクが入り混じっているのは、堂珍嘉邦さん。ケミストリーの曲を聴いて育ってきたし、カラオケで歌ったりもするし。まさか一緒にお芝居する日が来るとは、夢にも思っていませんでした。それから、加藤和樹さんがアンダーソン役とジャック役の2役やられるので、それが楽しみです。それにしても2役なんて…すごいですよね!
―― 今回はダニエル役、アンダーソン役、ジャック役がWキャストです。Wキャストのおもしろさや難しさは?
木村 Wキャストで役者が変わると、ひとつのセリフの解釈も作品全体も変わってきます。いろんなパターンが出てくるだろうし、いろんな角度から作品を観られるので、お客さまの楽しみは倍増するのでは。役者にとっては、稽古時間が少なくなってしまうというネガティブ面もあります。自分の役を完全に体に落とし込むまでには、同じ役のお芝居を見ると追いつめられてしまうことも。だからWキャストは、プラスもありマイナスもありですね。
小野 役者の組み合わせによって、雰囲気やセリフの運びなどが変わっていくと思うので、それが楽しみのひとつです。難しいのは、自分と同じ役を演じる人がどうしても気になったり、最初は比較してしまったりすること。お芝居でやりたいと思っていた案を、先にやられちゃった!ってこともあったり。でも、そんなことを乗り越えて、達成くんをはじめキャストのみなさんとお互いに高め合いながら稽古していきたいと思います。
―― 公演を楽しみにしているお客さまにメッセージをお願いします
木村 これだけ素敵なキャストが揃って、自分もチームの一員になれたことが奇跡のように感じています。みなさん実力者ですし、演出の白井さんがかなりの化学変化を起こしてくださるに違いありません。今年の秋は、東京・日生劇場と大阪・フェニーチェ堺が真夏のような熱を帯びるはず! そんな作品をみなさんにお届けしたいので、楽しみにしていてください。
小野 キャストの組み合わせにより、毎回違う色が出てくるミュージカル作品になると思います。どの組み合わせも全部観てもらいたいのが本音ですが、こんなご時世なので無理のない範囲で、劇場へ足を運んでいただけたらうれしいです。できうる限りの感染防止対策を徹底しながら作品をつくり上げ、無事に公演初日を迎えられるように努力していきます。