インタビュー
日本人の心に響く、新しいミュージカル。
演じる私自身も、とても楽しみです。
中川晃教さん
江戸川乱歩作品で誰でも知っている大怪盗・怪人二十面相と名探偵・明智小五郎の「世界で一番綺麗な宝石」を巡る華麗な対決を、極上のエンターテイメント作品に仕上げた新作ミュージカル『怪人と探偵』。今回は主演の中川晃教さんに、本作にかける思いや役づくり、見どころなどを伺いました。
―― 出演依頼があった時はどのように思われましたか
最初に怪人二十面相とはどんな人物なのか。想像してみると、やはり渋めの男性、闇の部分があったり、屈折した心を持っている人物のように思いました。でも調べてみると、元はサーカス団の曲芸師で、遠藤平吉という素朴な名前を持ち、普通に街を歩いているような人間なのかもしれないと。ただ、怪人二十面相というだけに、いろいろな顔を持っている。これは演じ甲斐のある役だ、チャンスをもらったと思いました。
しかも、日本人なら誰でも知っている江戸川乱歩作品がミュージカルになった。これから何を見せられるんだろうか、いい意味で裏切られるような題材で、江戸川乱歩の世界で有名な怪人二十面相と明智小五郎という、いわゆるライバルが向き合っていく、男同士のドラマが展開される。なぜ今までミュージカルがなかったのかと思うと、とても楽しみになりました。
作詞・楽曲プロデュースの森雪之丞さんから説明を受けた時、今までいろいろな怪人二十面相が描かれたけれど、このミュージカルでは怪人二十面相が恋をする。今まで誰も思い描かなかった二十面相の捉え方でした。怪人二十面相といえば声高らかに歌うというイメージはないかと思うのですが、今回は1幕の初めの方で二十面相が歌うナンバーは、ロックっぽい音楽をハイトーンで歌いあげます。
二十面相が「初めて愛を見つけた。今までいろんなものを盗んできたけれど、今回初めて盗めないものに気づいた。でも愛を盗みたい」というようなロマンティックで激しい歌です。こんな二十面相は今までなかった。そういう意味では、全く新しい二十面相をつくっていくことになるわけで、それがとても楽しみです。
―― 今回はどのような役づくりを考えておられますか
怪人二十面相はいろんな人間に変装できる、至近距離で見てもわからないくらいの変装の名手です。そして今回、私は役者として声、動き、芝居、音楽を通して演じていくだけでなく、様々な舞台装置の仕掛けも多用されています。
もしかしたら舞台上にいる全員が二十面相という可能性さえあるかもしれない。そう考えると、自分の役だけでなく、共演者のセリフから、あるいは脚本全体から役を紐解いていく方がいいのかもしれない。例えば、舞台にどういう感じで姿を現わすか。怪人二十面相は何にでもなれるので、あえて土台はつくくり込まない方がいいと思っています。
またミュージカルの場合、歌と芝居は同列です。芝居だけでなく、歌を歌うことも含めて役の感情が見えてくるところもあります。
今はまだ芝居と音楽の接合点が見えていない部分もあるのですが、ミュージカルっぽくない、もっとポップで興味深いものになるだろうと思います。
―― このミュージカルの見どころは?
江戸川乱歩の作品というのは、日本人の心に響くテーマであり、大人も子どもさんも楽しめるものです。しかも、今回のミュージカルのストーリーですごいと思うのは「世界一きれいな宝石=愛」がテーマであること。二十面相と明智小五郎という二人の男が愛というものに向かって奮闘する。物語を知っている人も知らない人も、どういう風なミュージカルになるのか期待させてくれます。二十面相と明智、そして二人が心を寄せる、大原櫻子さん演じる令嬢「リリカ」との三角関係のワクワク、ドキドキ感を楽しみにしてほしい。3人それぞれの関係から描かれる、愛のストーリーを見てほしいと思います。
―― テーマ曲を東京スカパラダイスオーケストラが担当されていますが、それについて感想を伺えますか
森雪之丞さんも、演出の白井晃さんも、格好いい舞台にしたいとおっしゃっています。そして東京スカパラダイスオーケストラは、もう存在するだけで格好いい世界観がある。江戸川乱歩、スカパラといわれただけでイメージが湧くのはすごいでしょう。江戸川乱歩の世界でも、スカパラのブラスの力は輝いている。スカパラの曲が始まっただけで何かを予感させる。スカパラの曲がないと物語の幕が開かないという感じがします。
―― 最後に、この公演に興味をお持ちのみなさまにメッセージをお願いします
『怪人と探偵』は、たくさんの方に楽しんでいただける極上のエンターテイメント作品であることはもちろんですが、公演が行われる劇場KAATもまた素晴らしい。KAAT内には、大ホールだけでなくスタジオなど様々な施設があり、ファミリーでも大人だけでも楽しめるプログラムが用意されています。しかも、場所は横浜。東京から足を運ぶとしたら、日常には感じられないエンターテイメントの世界がKAATにあり、周辺には中華街や赤レンガ倉庫、さらにショッピング施設も揃っています。様々なプラスαが体感できるロケーションなので、『怪人と探偵』を観ることに加えて、いろいろなイベントを楽しんで、心の贅沢を味わってください。
―― どうもありがとうございました
ヘアメイク:井上京子 スタイリスト:AKIRA
ストーリー
昭和34年(1959年)東京麻布。元子爵北小路家の令嬢・リリカと安住財閥御曹司・竜太郎の婚約発表の日、北小路家の大広間では、華やかな仮面舞踏会が催されていた。パーティの最中、不思議なことに、誰も気づかぬうち、大広間の柱時計には怪人二十面相の犯行予告状が貼り付けられる。『3日後10時北小路家の家宝「パンドーラの翼」を頂戴する』
指定の日時、二十面相の犯行を阻止するために、探偵・明智小五郎が北小路邸を訪れる。明智を一目見た北小路家の令嬢のリリカは明らかにショックを受ける。明智も動揺を抑えている。実はリリカには暗い過去があり、明智とリリカには深いつながりがあったのだ
10時を告げる鐘の音と共に、予告通り怪人二十面相が現れ、「パンドーラの翼」は爆発、明智は負傷し、二十面相がリリカを連れ去ってしまう・・・