作品について

明治座×東宝×ヴィレッヂのコラボレーション企画!
音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」製作発表レポート

明治座×東宝×ヴィレッヂ、それぞれ歴史もカラーも異なる三社から、同じ年齢の男性プロデューサー3名が集まって立ち上げたのが、通称・“三銃士企画”。第一弾として上映されたのは、漫画家・岡野玲子による「両国花錦闘士」(2020年)。個性的でクセの強い登場人物たちが縦横無尽に暴れ回る姿が大きな話題を呼びました。待望の第二弾は、「リチャード3世」×「昭和歌謡」をテーマにした“復讐劇”! 初舞台にして初座長を務めるのは、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも24歳とは思えない貫禄ある演技を見せた実力派若手俳優・中川大志さん。脚本・演出を務める倉持裕さんをはじめ、中川さんらキャストが勢揃いした製作発表の様子をお届けします。

製作発表レポート

初舞台にして初座長!中川大志さんは緊張の面持ちで挨拶

9月某日、東京・新橋にて音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」の製作発表が行われました。主演の中川大志さんが歌う力強い劇中歌をBGMに壇上に現れたのは、脚本・演出を務める倉持裕さん、主演の中川大志さん、キャストである松井玲奈さん、福本雄樹さん、浅利陽介さん、中村 中さん、山内圭哉さん、池田成志さん。公演への意気込みや役作りについて語りました。

中川大志さん
俳優 中川大志さん
── いよいよ今週から稽古がスタートするということですが、まずは今回の作品の作・演出を手掛けます、倉持裕さんからご挨拶をお願いします。

倉持 本日は皆さまお集まりいただきありがとうございます。今作は、プロデューサーチームの“三銃士”の皆さんから、中川大志さん主演で、シェイクスピアの「リチャード3世」のプロットを使って、昭和歌謡界を舞台にしたお芝居をやってみませんかというご提案をいただきまして、「それは面白そうだ!」ということでスタートした企画です。ストーリーは、醜い見た目のせいで虐げられてきた「鳴尾定(なるお•さだむ)」という男が、ある恐ろしい方法で美しい姿を手に入れ、その体を使って「桜木輝彦(さくらぎ・てるひこ)」という芸名で芸能界デビューを果たす。その後、芸能界でのしあがりながら、それまで自分を冷遇してきた芸能一家に仕返ししていく……といういわゆる復讐劇です。見どころは、生バンド演奏と、出演者の皆さんの歌謡ショー、歌唱シーン、あとは中川くんの、鳴尾定と桜木輝彦の演じ分け……と言ったところでしょうか。どうぞご期待ください!

中川大志さん
── ありがとうございます。それではキャストの皆さんからそれぞれ「意気込み」をお願いします。まずは、歌謡界で悪虐の限りをつくす鳴尾定と美貌の歌手・桜木輝彦を演じる、中川大志さん。

中川 本日はお集まりいただき、ありがとうございます。中川大志です、よろしくお願いします。今日はこうして出演者の皆さまと初めて顔合わせをさせていただいたのですが、久々に震えるくらい緊張しています(笑)。僕自身本格的な舞台は初めての挑戦なのですが、遡ること3年ほど前、“三銃士企画”の一作目を明治座で観劇させていただいて、そのときにプロデューサーの皆さまにお手紙で「次の舞台を一緒にやりませんか」とお声がけいただいたところからのスタートでした。その後、1年半くらい前から、この作品に向けてボイストレーニングを始めるなど、少しずつ準備をしてきまして、いよいよ今週から稽古が始まるところまで来たんだなと、感慨深く思っています。わからないこともたくさんありますし、未知の挑戦になります。僕自身、知らない自分にたくさん出会えたらいいなと思っています。一生懸命演じますので、よろしくお願いいたします。

── 続いて、鳴尾家に怨恨を抱くレコード会社の女社長・蘭丸杏(らんまる•あん)を演じます、松井玲奈さん。

松井 松井玲奈です。私が演じる役は、とてもかっこよくて、強くて、悪い女性のイメージがあります。稽古をしていく中で、彼女の正義と悪を私自身も理解して、お客様にかっこいい女性を見せていきたいと思っております。本番を楽しみにしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。

── 続いて鳴尾家の長男で期待の新人歌手・鳴尾利生(なるお・としき)を演じます、福本雄樹さん。

福本 福本雄樹です。よろしくお願いします。この作品は「リチャード3世」が元になった復讐劇ということで、人間の醜いところや愚かなところがたくさん出てきます。今、コロナがいつ終わるかわからない状況で、僕たちもまたマイナスの感情を抱えていると思いますが、そんなときにこの作品を見て、少しでもスカッとして、後ろむきの気持ちが浄化されれば嬉しいです。

昭和作品への憧れを語る浅利さん、山内さんの冗談に会場爆笑!

── 続いて、中川さん演じる定が、裏社会でのしあがるために手を組むチンピラ•徳田誠二を演じます、浅利陽介さんお願います。

浅利 徳田誠二を演じます、浅利陽介です。僕は大志くんが演じる定の「セコンドー役」というか、公私共にそんな関係になれればいいな、なんてことを思っています。昭和の作品、僕は大好きなのですが、それは僕から見るとすごく素直に「欲」に向かっている人がたくさんいた時代、そんな雰囲気を感じているからです。ですから、そんな空気感をこれからの稽古で作り上げていくのがとても楽しみです。それから音楽がね、毎回あるので、僕もおそらく新鮮な気持ちでその音楽にのりながら、作品の雰囲気を出していければいいなと思っています。よろしくお願いします。

── 次に、鳴尾家の愛娘で、スター街道を邁進中の一条あやめを演じます、中村 中さんです。

中村 一条あやめを演じます、中村 中と書きまして「なかむらあたる」です。よろしくお願いします。今回は歌謡曲、キャストもみんな歌うということですが、歌というものは、やっぱり不安があったり、不満があったり、いつの時代もそんな憤りや憧れから生まれてくるものだと思っています。「歌は訴える」ともいいますし……ですので、音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」をご覧になった方も、歌う側である私たちも、最高のうさばらしになるよう、暴れまわろうと思っています。ぜひ楽しみにしていてください。

── そして、鳴尾プロダクションを文字通り裏から支えます、薮内組3代目組長・大松盛男(おおまつ・もりお)を演じます、山内圭哉さん。

山内 皆さまご苦労様でございます。コロナ禍のなか、演劇界はかなり厳しくやっています。とにかく全公演無事に終えること……まぁそれでなくとも昨今は、不祥事や“コンプラ違反”など色々ありますので……もう私も帯を締め直してですね(会場爆笑)、この公演に挑みたいと思っています。ご静聴、ありがとうございました(笑)。

── 続いて元映画スターで今作の“ラスボス”的存在でもあります、鳴尾プロダクション社長・鳴尾勲(なるお・いさお)を演じます、池田成志さん。

池田 こんにちは、池田成志です。あらすじを読ませていただきましたが、昔、松尾スズキさんのお芝居で稽古をしていたときに、「お客さんはどんな反応になるだろう」と思っていた舞台があったんです。それが、いざ公演が始まってみたら大受けで……。思いがけない反応が返ってきて、「ああ、お芝居は自分が思っていた反応と違うこともあるんだな」「自分と人とでは受け取り方が違うものもあるんだな」ということを強く思いました。今回も、最初からこういう話だと先入観を持たずにやりたいと思っています。私は今年還暦になるのですが、そんなことを改めて思い、これからは生まれ変わって生きていこうと思っていますので(笑)、どうぞよろしくお願いします。

昭和歌謡界を舞台にした音楽劇でそれぞれが演じるキャラクターとは?

全員の挨拶が終わると、質疑応答の時間へ。記者席からは「それぞれが演じるキャラクターのイメージや魅力を教えてください」という質問が。

中川大志さん
── では、中川さんからお願いします。

中川 僕が演じる「鳴尾定」は、生まれつき顔も体も醜い男で、鳴尾一族からも世間からも負の存在として隠され、閉じ込められていた男です。その男が色々な手段を使って「桜木輝彦」という姿に生まれ変わり、復讐をしていく……。同じ人物なのですが、見た目が正反対になるキャラクターになります。僕が台本を読んで想像しているのは、鳴尾定としての姿が桜木輝彦に及ぼす影響、そしてその逆……。「一方の姿がもう一方の姿に影響を及ぼす」、そこがこのキャラクターのテーマになるのではないかと想像していますので、とにかくどれだけ「鳴尾定」として、自分のなかに憎しみや怒り、悲しみのエネルギーを溜め込めるか、自分のこととして溜め込められれば溜め込められるほど、それが「桜木輝彦」として光を浴びた時のエネルギー源になるのではないかなと想像しながら、いま台本を読んでいます。

松井 私が演じる「蘭丸杏」という役は、悲しさや悔しさを長い間ずっと抱えている女性なのですが、その「負の感情」を、自分にとっての正義として、復讐したい相手にぶつけていく。負の感情をたくましく剣のように振りかざす、そんな女性なんじゃないかなと今は思っています。

福本 僕が演じる「鳴尾利生」という役は、中川さん演じる「鳴尾定」の兄で、定の希望でもあるような存在、スターではあるのですが、実は自分に自信が持てなかったりという普通の青年のような悩みを抱えている存在でもあります。それでもスターでいなければならない葛藤を抱えた男なのだと思っています。

浅利 「徳田誠二」という役を演じますが、今僕はその彼のエネルギーの源になるものを探しているところです。ざっくりいうと「彼は親族がいない人」。だから、ご飯を食べたり、何かよい思いをするためには自分一人でどうにかしなければならない、というそんな人です。だから、常に死ぬこととは隣り合わせ……なのかどうかは、正直想像が及ばないところもありますが……。鳴尾一家や作品を外側から見たら、少しいいところもあるのかな、見え方として……とは思っています。今、少しずつセリフを声に出して練習する中で、彼にはちょっと「べらんめえ」のしゃべり口調があり……これは自己満足的ではありますが、しゃべっていると心地いいです(笑)。

中村 私は「一条あやめ」という役を演じますが、彼女は鳴尾家に生まれながらも、いまひとつ愛情が足りていないと思いながら過ごしている人間じゃないかと思っています。スターの役ということなので、表舞台に出ているときと、日常で過ごしているときのギャップを出せたらいいのかなと思っています。一条あやめの夫役の福田さんと、うまくコミカルな夫婦感を出せたら楽しくお話が進んでいくかな、と思っていますが、そこは同時にプレッシャーを感じている部分でもあります(笑)。姿が見えているところは華やか、でも水面下では溺れないようになんとか生きていきたいというか、人に認められたいからこそ、彼女はスターになりたいのでは、と思っています。

山内 私はヤクザの役ですね。昭和の芸能において(ヤクザは)はほぼほぼイコールのような感じですよね。いわば鳴尾プロダクションの、「ケツもちをしている」という存在ですが、そのあたりは非常に昭和的なので、そんな時代感みたいなものを表現できたらと思っています。

池田 僕は「鳴尾勲」という父親役です。最近は頑固でどうしようもない父親役が多くて、正直「また父親か」とも思っているのですが(笑)。このあらすじや背景を見ていると、昭和らしいというか、「大映テレビのようだな」と思うんですね。ですからあまり複雑なことは考えずに、振り切って演じていってもいいのかなと思っています。

自身の名前が入ったタイトルには「仮タイトルかと思っていた」

── 今作はシェイクスピアの「リチャード3世」をプロットにしたということですが、倉持さんは中川さんを主演に、「当てがき」をされたという感じでしょうか。

倉持 中川くんは、そうですね。最初にプロデューサーから中川くん主演でと言われたときは、まだ中川くんは決まっておらず、「中川くんを口説こう!」という感じでした。ですから、「中川くんがやったら面白いんじゃないか」というあらすじを一生懸命作ってオファーした、という感じですね。それで中川くんがOKしてくれたので、そこからは中川くん当てがきで書いていきました。

── 中川さん、「当てがき」ということですが。

中川 あ、はい、そうですね! 倉持さんとは以前コント番組でご一緒させていただいたことがあるのですが、こうして自分の主演舞台で、作•演出でご一緒できるとは思ってもみなかったので、とても嬉しいです。今年も倉持さんの舞台を2作品見せていただいたのですが、また今作とは色の違う作品だったので……。いま、台本を読んでイメージしているところから、まだ変わる可能性もあるのかもって。作品も自分も、どんなふうに変わっていけるのか、というところも含めて楽しみにしています。

── そして、今作のタイトルは「歌妖曲~中川大志之丞変化~」。なかなかご自身の名前がタイトルになる経験をされる俳優さんはいらっしゃらないですよね?

中川 はい。本当に最初は仮のタイトルかなって思っていたんですね。それが本タイトルとして発表になっていたので、ちょっとドキドキしています(笑)。

── 倉持さん、そこはどうしてもお名前を入れたかった、ということなのでしょうか。

倉持 そこはもう、「必ず入れたい!」というのは、三銃士たっての希望でしたから。「じゃあ入れましょう!」ということで決まりました。

その後、記者から倉持さんへ「初のシェイクスピア作品への取り組みについてや、中川さんの起用で期待することとは?」との質問が。

倉持 「リチャード3世」を翻案……とまでは思っていないのですが、力強く骨太な筋立てをお借りしたいと思いました。中川くんはいろいろできますよね。見るたびに違う俳優さんで、声優をされていたときは後で聞くまでわからなかったり。何にでもなれる方だと思っています。コント番組でも本当に色々な役をやってくれて……恥ずかしがらずに行くところまで行く、そういうことをしてくれていたので、何にでも「なりきれる人」なのだなと思っています。今回も、明治座、座長と言われたら、それになりきれる人だと思っていますので、そこは信頼しているので任せたいと思っています。

キャストの徳永ゆうきさんが宣伝部長としてサプライズ登場!

質疑応答の時間がひと段落すると、「お疲れさまです!」のかけ声と共に、華やかな法被を着たキャストの徳永ゆうきさんがサプライズ登場!

中川大志さん

徳永 本日はお忙しい中お越しくださってありがとうございます。本作の宣伝部長に就任しました、徳永ゆうきです。よろしくお願いします。

戸惑いを見せる中川さんが、マイクを持つと、

中川 あの、もちろん、キャストとして徳永さんがいらっしゃることは承知していたのですが、宣伝部長というのは……あとその法被が気になるのですが。

徳永 はい!そうなんです、法被も作っていただいて……いい質問!

(会場笑)

中川 あ、ありがとうございます!(笑)

徳永 宣伝部長としてはですね、今後SNSなどで稽古場のオフショットなどを私がパシャ! と撮影しまして、皆さんに貴重な姿を届けていきたいと思っております!

と、徳永さんからは今後の「宣伝計画」が明かされました。その後は倉持さん、キャストが揃っての写真撮影タイムに。時折笑いが漏れる和やかな時間となりました。最後は中川さんが締めの挨拶。

中川 本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。こうして皆様の前に今日初めて立ちまして、いよいよ始まるんだな、始まってしまうんだなという気持ちで、背筋が伸びる思いでいます。僕自身、念願かなって舞台の上でようやくお芝居ができることに感謝したいと思っています。この昭和の芸能界の時代は、僕の世代からするとすごく新鮮なところがたくさんあります。今にはないエネルギーだったり、ファッション、音楽というカルチャーがすごく色鮮やかでポップでカラフル、そういう印象があります。そこに、血なまぐさというか、人間の内からにじみ出てくる匂いだったり、温度だったりを乗せて、見てくださる方の深い部分に響くような、エネルギーのある、熱量のある舞台になればと思っています。僕自身も「鳴尾定/桜木輝彦」として大千秋楽を迎える頃には、一体どんな景色が観られるのか……。先輩方の胸を借りて精一杯努めさせていただきます。がんばります!!いい舞台にします!!

と、力強い言葉で締めてくれました。音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」は、11月6日より明治座でスタート。東京公演後、福岡公演はキャナルシティ劇場(12月8日初日)で、大阪公演は新歌舞伎座(12月17日初日)で開催されます。

取材・文/小川聖子

物語

その血に、運命に、復讐を遂げるべく、唄と殺しの華麗なるショーが幕を開ける。

昭和40年代の歌謡界に彗星のごとく登場し、瞬く間にスターダムに駆け上がった桜木輝彦(中川大志)。そのベールに包まれた経歴の裏側には、戦後の芸能界に君臨する「鳴尾一族」の存在があった。

元映画スターの鳴尾勲(池田成志)が手掛ける、愛娘の一条あやめ(中村 中)と愛息の鳴尾利生(福本雄樹)は、スター街道を邁進中。
フィクサー・大松盛男(山内圭哉)が控え、今や世間からは、大手芸能プロダクションと謳われていた。

だが、そんな鳴尾一族にあって、存在を闇に葬られた末っ子がいた。ねじ曲がった四肢と醜く引きつった顔を持つ、鳴尾定(中川大志)。

一族の汚れとして影の中で生き長らえてきた定は、闇医者の施術により絶世の美男子・桜木輝彦に変身を遂げ、裏社会でのし上がろうとするチンピラ・徳田誠二(浅利陽介)と手を組み、同じく鳴尾家に怨恨を抱くレコード会社の女社長・蘭丸杏(松井玲奈)と政略結婚し、自身の一族に対する愛の報復を始める。

その血に……運命に……復讐を遂げるべく、桜木輝彦による唄と殺しの華麗なるショーが幕を開ける───。

キャスト&
スタッフ

【出演】

中川大志/松井玲奈 福本雄樹/浅利陽介 中村 中/
福田転球 玉置孝匡 徳永ゆうき 中屋柚香 長田奈麻 香月彩里
四宮吏桜/山内圭哉/池田成志 ほか

【作・演出】倉持 裕
【プロデューサー】「三銃士」三田光政(明治座) 鈴木隆介(東宝) 浅生博一(ヴィレッヂ)

公演情報

音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』

【東京】明治座

2022年11月6日()~11月30日(水)

定価 S席:13,500円⇒
《ご優待価格》S席 12,150円

  • 本公演のチケット購入代金のお支払いにはビューカードのみご利用いただけます。
  • ご観劇前に明治座の感染症対策についての記載を必ずご確認の上、ご来場下さいますようお願い申し上げます。

公演終了