KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「蜘蛛巣城」のチケット情報

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
蜘蛛巣城

イントロダクション

戦乱の世に翻弄される若き夫婦。
赤堀版『蜘蛛巣城』。
日本映画界の巨匠・黒澤明監督の
傑作映画の舞台化。

2023年2月、<忘>ラインアップを締めくくるホール公演として上演するのは、赤堀雅秋演出による『蜘蛛巣城』。
本作は、“世界のクロサワ”と呼ばれ国内外の映画界に絶大な影響を与えた日本映画界の巨匠・黒澤明監督によって1957年に公開された映画作品です。シェイクスピアの四大悲劇の一つとして有名な『マクベス』を、黒澤監督が日本の戦国時代に翻案し、能楽・狂言の様式を応用した日本的で無常観に満ちた戦国スペクタクル作品として知られています。

ストーリー

日本の戦国時代、天下統一の野望を抱いた者たちが群雄割拠の様相を呈した頃、蜘蛛巣城の城主・都築国春は味方の謀反により苦戦をしいられていた。
一の砦の大将・鷲津武時と二の砦の大将・三木義明は隣国との激しい戦いの末、蜘蛛手の森の中をさまよっていると、二人は森に棲む謎の老婆と出会い、二人は予言めいたことを告げられる。武時には「今宵からはあなたは北の館のお殿様、やがては蜘蛛巣城のご城主様」、義明には「あなたのお子はやがて蜘蛛巣城のご城主様」。
この予言を聞いてから武時とその妻・浅茅の運命は大きく変わり、予言に誘われるかのように動き出す――。

インタビュー

シェイクスピアの四大悲劇として名高い『マクベス』を原案に、黒澤明監督が日本の戦国時代を舞台とした、能や狂言の様式を応用した名作映画「蜘蛛巣城」(1957年)。日本的で無常感に満ちたこの映画作品を、主演に早乙女太一さん、倉科カナさんを迎えて舞台化!
もともと海外の古典作品が大好きだという倉科さんに、舞台への意気込みや役作りについて聞きました。

倉科カナさん
倉科カナさん

夫婦愛が丁寧に描かれたひと味違う『マクベス』

――まずは、舞台『蜘蛛巣城』への出演オファーがきたときのお気持ちを聞かせてください。

今回の舞台の上演台本、演出を務める赤堀雅秋さんとは親交があって、以前から「いつか一緒にお仕事ができたらいいね」なんて話はしていたんです。赤堀さんは「じゃあそのときは主演じゃないとね」なんて言ってくださっていたのですが、まさか本当に「W主演」というお話をいただけるとは思っていなくて。「赤堀さん、格好いいな!」と嬉しかったですね。今回の舞台の基になる映画「蜘蛛巣城」は、お話をいただいてから映画や脚本を見せていただき、日本的な情緒や切なさを内包した作品だと感じました。「夫婦愛」がとてもしっかり描かれている点は、『マクベス』をベースにしながらもひと味違うところでもあって、「ぜひ挑戦したい!」と強く思いました。

倉科カナさん
――今回、「マクベス夫妻」となるのは戦国時代を生きる武将・鷲津武時とその妻・浅茅(あさじ)。倉科さんは「マクベス夫人=浅茅」を演じられますが、浅茅にはどのような印象をお持ちでしょうか。

「マクベス夫人」は、もともと業が深い印象がありますが、この『蜘蛛巣城』の浅茅に関していえば、とても一途な女性だと思います。というのも、まず浅茅は政略結婚が主流だった日本の戦国時代に、本当に自分の好きな人と結婚しているんですよね。でも、その愛する人との間に子供を授かることはできなかった。それは、あの時代においては大きなデメリットなので、浅茅はそのことを負い目に感じています。夫が好きだからこそ、申し訳ないと思っているんです。そんなところへ、「旦那さんが、もっと良い地位につける方法がありますよ」と言われたら……。結局そこで、手を伸ばしてはいけないものに手を伸ばしてしまうから、彼らは破滅に向かってしまうわけですが、その根底にあるのは「愛」なのだ思うと切ないなと思います。相当なサイコパスでない限り、「悪女」と言われる存在でも、共感できるところはあります。それが、その人が悪女である理由にもなっているので……そんなところをひとつひとつ拾って、気持ちの道筋を作っていければと思っています。

――浅茅は好きな人のために行動することで破滅に向かってしまう存在ですが、ご自身と「似ているな」と思われたり、共感されるところはありますか。

どうでしょう(笑)。私は仕事ばかりしてるから、なかなか想像がつかないですけど、そのときは自分もそうなるのでしょうかね……。ただ劇中には、政略結婚をして、子宝にも恵まれている浅茅の妹というのが対照的な存在として出てくるんです。そこで浅茅が感じるジェラシーや、反対に「でも、私たちは愛し合っているのだ」というプライドみたいなもの……そのあたりの感情のモヤモヤは、私にもすごくわかります。

――役作りはどのように進めていかれる予定でしょうか。

まず、一番大切なのは、早乙女太一さん演じる鷲津武時との夫婦のシーンかなと思っています。そこでふたりの絆のようなものがしっかりと築けたら、後半にかけても伝わる内容になるのではないかと思っていて。役作りにはいろいろなアプローチ方法がありますが、今回は夫役の早乙女さんと一緒に作りあげていく感じになるのではないかなと思っています。まだ今日初めてお会いしたところで、全然お話もできていないのですが(笑)。

倉科カナさん

信頼している赤堀さんの演出で舞台を作り上げるのが楽しみです

――今回は、冒頭でもお話がありましたが、赤堀雅秋さんの演出です。どんなところに期待されていますか。

赤堀さんの演出には常に「リアリズム」を感じます。演出された舞台を見ていても、上っ面ではなく、役者が本当に(腹に)落とし切った状態で舞台の上に立っているのがわかるので、観客はただもう、「そこで生きている人を見ている」というような感覚になれるんです。さらに、訴えたいものが明確なので、メッセージがダイレクトに伝わってきますよね。外側は「静」でも、心は「動」、内なる炎が燃えているような舞台を作られるので、今回はどんな炎が見られるのか。その炎は私たち演者にも移ってくるはずなので、そこも楽しみにしています。巨匠と言われる黒澤監督の作品ではありますが、私は演出が赤堀さんということで、プレッシャーを感じすぎず、ある意味安心して身を委ねられるなと思っていて。映画とはまた別の楽しみ方ができるのではないかとも思いますので、ぜひ期待していただければ嬉しいです。

――『蜘蛛巣城』は、自分の本分を忘れて「欲」に翻弄される人間の恐ろしさや愚かさがテーマになっています。倉科さんご自身は、ご自身の「欲」とはどのように向き合っていますか。

「欲」は私にもたくさんありますが、これは私の中のジンクスで、あんまり「ああしたい、こうしたい」と考えすぎるとうまくいかないんですよ(笑)。だから心がけているのは「無」ですね。心の中に「無」という漢字を思い浮かべて、あれこれと望まないようにしています。これ、意外と効果があるというか、心が落ち着いてくるんです。特に、「〜してくれたらいいのに」と他人を頼るような意識は、なるべく手放すようにしています。ただ、「これを終わらせたら、あれを食べよう!」みたいな小さな欲や、自分が動くことで変えられる状況に対しては、「欲」というよりは「目標」という意識で向かっていくようにしています。そういう場合は原動力になりますから!

倉科カナさん
――倉科さんは「観劇が大好き」ということですが、ぜひ「観劇の魅力」と、見に来られるお客様へのメッセージをいただけたらと思います。

観劇の魅力……そうですね、私は観劇というものがエンターテインメントとして本当に大好きなんです。自分と同じその空間に役者さんがいるってすごいことですし、さらにその人たちが目の前でお芝居をしてくれるというのもすごいこと。しかも、舞台という場所があれば、役者は外国人でも、妖精でも、赤ちゃんでも、おじいちゃんでも、何にでもなれるじゃないですか。それって映像作品では絶対にできないこと。そこが面白いですよね。さらにお芝居って、その場にいるお客さんによってもどんどん変わっていくものだと思います。お客さんのリアクションによって、役者さんのお芝居も微妙に変わっていきいますし、それはそのときだけのもの。だから私はそんな「その場にいる人全員で作り上げていく」演劇というものにとても大きな価値を感じるんです。
舞台芸術というものは、役者だけでなく、音楽も、衣装も、美術も、ひとつひとつこだわったものが組み合わされて出来上がるものです。それを生で丸ごと体感できるって、ものすごいエンターテインメントですよね! ですから私自身が劇場に足を運ぶ時は、そんなステージの様子もつぶさに観察しますし、あとは「どんなお客さんが来ているかな」というのもすごく見ます。その上で、舞台が始まったら、絶対に音を立てないように気をつける! それが見る側の役割のような気がしますから。シェイクスピアの『マクベス』はいろいろな劇場でたびたび上演されている作品ですが、『蜘蛛巣城』はなかなか上演されません。それこそ、一期一会の舞台だと思いますので、この機会にぜひ、ご覧いただければ素敵な体験になると思います。

キャスト&スタッフ

【原脚本】
黒澤明 小國英雄 橋本忍 菊島隆三

【脚本】
齋藤雅文

【上演台本】
齋藤雅文 赤堀雅秋

【演出】
赤堀雅秋

【出演】

早乙女太一 倉科カナ
長塚圭史 中島歩 長田奈麻 山本浩司 水澤紳吾
西本竜樹 永岡佑 新名基浩 清水優 川畑和雄 新井郁 井上向日葵 小林諒音
相田真滉 松川大祐 村中龍人 荒井天吾・田中誠人(Wキャスト)
久保酎吉 赤堀雅秋 銀粉蝶

公演情報

公演名
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『蜘蛛巣城』
上演期間
2023年2月25日(土)~3月12日(日)
会場
KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉

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