STORY
ハリウッドの人気プロデューサー、フランク(平方元基)は、赤い台本を手に過去を振り返り始める…。
1976年ロサンゼルス。彼の豪邸では華やかなホーム・パーティが開かれていた。フランクの取り巻きが映画の大ヒットを祝う傍らで、中年女性がひとりくだをまき、フランクを罵っていた。彼女はメアリー(笹本玲奈)。元ベストセラー作家だが、すっかり落ちぶれてアル中に。ピューリッツァー賞を受賞した脚本家チャーリー(ウエンツ瑛士)の話題が出ると、「私たち3人は昔、切っても切れない親友同士だったのよ!」と叫んで、その場を追い出される始末。フランクの妻ガッシー(朝夏まなと)は夫の新しい愛人に嫌がらせをし、パーティはいよいよ混乱状態に。
フランクはうんざりしていた。今の自分は、自分じゃない。
なぜこうなってしまったのか?どこで間違えたのか?
フランク、チャーリー、メアリーの3人の絆はもう戻らない?
フランクは過去へと遡っていく。
テレビの生中継のハプニング、船旅から帰国し確かめ合った友情、前妻ベス(昆 夏美)との辛い離婚調停、BWプロデューサーのジョー(今井清隆)と迎えた、ドキドキのミュージカル開幕初日、小さなナイトクラブで歌い踊った日々…、いつも3人一緒だった。
記憶を巻き戻し、辿り着いたのは、20年前。
それは3人が出会い、決意したあの瞬間だった…。
INTERVIEW
人間らしさあふれる3人にじわりと共感を覚える、見応えも聴き応えもあるミュージカルです。
英国最高峰オリビエ賞を受賞した『メリリー・ウィー・ロール・アロング』の“新演出版”が日本初上陸。ミュージカル女優であり演出家のマリア・フリードマンと、現代ミュージカル界の巨匠スティーブン・ソンドハイムのタッグで誕生した極上のエンターテインメントに、多くの注目が集まっています。ブロードウェイ・ショービジネス界での友情と妥協、成功のために支払った大きな代償を描いた本作は、時間を遡り“逆再生”で物語が進行。トリプル主演の平方元基さん、ウエンツ瑛士さん、笹本玲奈さんがそれぞれの役の20年間を演じます。今回は、平方さんと笹本さんのおふたりに、本作への思いや役づくりなどについてお聞きしました。
俳優 平方元基さん
女優 笹本玲奈さん
―― 出演が決まった時のお気持ちを教えてください
平方元基(以下、平方) シンプルに嬉しかったのと同時に、僕でいいのかなとも思いました。40歳から20歳へと遡っていく逆再生の物語なので、もっと腕のいい俳優がたくさんいるのに…と。でもやるからには頑張らなきゃと気合が入りました。
笹本玲奈(以下、笹本) お話をいただいた時には平方さんとウエンツさんの出演がわかっていたので、「このメンバーで作品をつくるのがおもしろそう!」というのが第一印象です。平方さんとようやく共演できることも、ロンドン留学で演劇を学んで帰って来たウエンツさんにお話を聞けることも、とても楽しみだと思いました。なにより、3人とも同い年なので、絆が深まるのも早い気がしますね。
平方 そういえば今回の作品用の撮影で初めて3人で会った時、安心感がハンパじゃない感じだった。普通は初対面だともっと気を使うと思うんですけど。作品のことも真摯に話し合えるし、休憩の時はノリよく喋れるし、その時点で結構盛り上がったので、これはいけるなって思いました(笑)。
―― はじめて台本を読んだ時に、作品やご自身の役についてどう感じましたか?
平方 “逆再生”で進む物語というと、難しくとらえられてしまうかもしれませんが、逆再生だからこそ描写がより色濃くなり、主人公の3人が現在抱えている問題や心情が際立ってくるのではないかと感じました。過去へと遡るにつれて「なぜあの時のシーンがこうだったのか」ということを、僕たちもお客様もどんどん知っていくことになります。俳優としてはすべてわかっているところを、いかに本当に初めて知ったかのように見せられるかが重要。ある意味、お客様を上手にだましていかないといけない。だから、技術的にも挑戦しないといけないし、勉強にもなるだろうと思いました。
笹本 40歳から20歳へ遡っていくので、どんどんピュアになっていかなければいけないですよね。自分が20歳の時はどうだったかなと考えると、未来が明るく見えていたし、自信や希望にあふれていました。それが若さだと思います。年齢や経験を重ねて、いいことも悪いことも含めさまざまなことを知ってしまうと、そういうピュアな年頃の女性をどう演じたらいいんだろうと悩んでしまいますね。難しくもあり、やりがいが大きい作品でもあります。
平方 僕の演じるフランクは、すごく人間らしい人間です。悩みや妥協、あらゆる選択と直面し、それらにどう折り合いをつけて進んできたか。そういった経験は、性別や職業などを問わず誰にもあてはまること。フランクみたいな人って、結構いると思うんですよね。ストーリーが進むうちに、「私もああいうことがあったかもしれない」と、お客様が感じ取ってくださるのではないでしょうか。
笹本 私が演じるメアリーも、どこにでもいる普通の女性。私はどちらかというとコスチュームプレイに出演することが多く、今はフランス王妃を演じています。国やその時代ならではの衣装が欠かせない役が多いんです。だからメアリーのような、人間くささのあるリアルな女性の20年間を演じることは、女優としてのチャレンジだと思いました。お客様が「そういうところ、自分にもあるな」と感じてくださるように、生々しい一人の人間として作品の中で生きられればと思います。
―― 役づくりのプランや、稽古に向けて準備していることはありますか?
平方 人それぞれだと思いますが、僕の場合は稽古場に入って相手役やほかの共演者の方がやっていることを感じながら、役をつくっていくほうが合っているようです。そして舞台上でいかにフラットでいられるかを大事にしているのですが、1日2回公演の時は頭がこんがらがって大変なことになるかも(笑)。でも、演出家が言うシーンの構成をきちんと頭に入れておけば、あとは相手と会話をすることで自然と成り立つかなと思っています。この作品に描かれた思いの数々が、お客様にしっかり伝わるように演じたいと思います。皆さんとの稽古が始まるまでにやっているのは、いろんな気分の時に台本を読むこと。嬉しい時、悲しい時、眠くてもうイヤだという時も台本を読んでみて、何かを感じたり考えたりするのが自分なりの準備ですね。いいコンディションやテンションで本番にのぞみたいと思っていますが、常にベストな状態でいられるとも限りません。それでも、どんな時も物語を崩さないようにすべきだと思うので、台本と一緒にメンタルトレーニングをしている感じです。
笹本 私も平方さんと同じで、役づくりにおいてはなるべく真っ白な状態で稽古場に入りたいと思っています。自分の中だけで役を固めすぎると、周りの方とキャッチボールができないし、演出家に言われたことができなかったりします。だから、何でも吸収して対応できる柔軟なスポンジ状態でいたい。今回は特に初共演の方が多くて、稽古場で皆さんがどういうアプローチをするのか、まったく想像ができません。それが楽しみのひとつでもあるので、あまり事前にああしようこうしようと考えずに飛び込みたいですね。準備と言ったら、ちゃんと譜面を読んでおくことかな。ソンドハイムの楽曲は不協和音だったり変拍子だったり、すごくつくり込まれていて、すべてに理由があると思うんです。なので、そこはちゃんと練習しておこうと思います。
平方 確かに。彼の曲は、音符ひとつひとつが意味を持って成り立っている気がしますね。今作にはキャッチーで素敵な楽曲がたくさん登場するので、僕も音楽としっかり向き合って考える時間を持ちたいと思います。というか、ソンドハイムと話がしたい!頭の中をのぞいてみたいです(笑)。
―― 今回、演出を担当するマリア・フリードマンは、メアリー役を演じた女優でもありますね
笹本 女優として大先輩でもあるマリアさんに演出していだけることは、楽しみでしかありません。初めて彼女の歌声をCDで聴いた時、「歌っている歌」ではなく「喋っている歌」に聞こえたんです。声だけの印象ですけども、喋る声でそのまま歌う方だと感じました。セリフから歌へと移行する時も、「ここから歌です!」みたいにならない。それでいて、1音たりとも外さない!それがマリアさんのすごいところ。得られるものがたくさんあると思うので、稽古の中で学ばせていただきたいです。
―― 最後に、公演を楽しみにしているお客様にメッセージをお願いします
平方 大劇場での華々しいコスチュームプレイももちろん大好きですが、今回の『メリリー・ウィー・ロール・アロング』のように、身近な“ご近所物語”的に楽しめるミュージカルというのはなかなかないと思います。出演者の面々もすばらしく、これから何が起こるんだろう…とワクワクするようなメンバーが一堂に会します。観終わった時にはお腹いっぱい(笑)、大満足で帰路につけるはず。ぜひ、劇場に足をお運びいただければ嬉しいです。
笹本 グランドミュージカルが好きな方も喜んでくださるに違いない歌の上手な出演者が揃っているうえ、ストレートプレイのようにお芝居そのものの見応えもあります。自分を見つめ直すきっかけになったり、自分の中で考えなきゃいけない何かを持って帰ってもらえるような作品になるのではないかと思っています。
平方元基 スタイリスト 五十嵐堂寿/ヘアメイク 藤井康弘
笹本玲奈 ヘアメイク 真知子(エムドルフィン)
ジャケット¥98,000/ポリオリ、Tシャツ¥7,000/ブリッラ ペル イル グスト、パンツ¥26,000/オーベルジュ、チーフ¥7,000/アルクーリ(以上すべてビームス 六本木ヒルズ)
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