清水ミチコ万博
~ひとりPARADE~
INTERVIEW
大阪万博2025にちなみ、万博をテーマにしました
今回は「大阪・関西万博2025」にちなんで、万博をタイトルに入れました。何もかも自由にやれと言われると難しいのですが、テーマを決めて範囲を区切ることで、逆に自由にできることがあるんですよね。万博は1970年に行った「大阪万博」が印象深いです。まだ私は小さかったのですが、とても感動しました。今回、「清水ミチコ万博」だけでもよかったのですが、もう一言なにか欲しくて「ひとりPARADE」をつけました。「ひとり」ってちょっとかわいそうな感じがして好きなんです(笑)。
1月2日の武道館公演は、ブルース・バンド「憂歌団」の木村充揮さんをゲストにお迎えします。木村充揮さんは、私が一方的にファンでモノマネをさせていただいていましたが、それを知ってか知らずか木村さんから声をかけていただき、今年の8月には京都のライブハウスで共演させていただきました。武道館では憂歌団の楽曲をはじめ、何曲か一緒に歌わせていただけたらと思っています。リハーサルはまだですけれど。
万博ということにしたので、有名曲をネタにしたものをいろいろと披露しようと思っています。万博は万博ですが、「パクリの万博」ですね。
恒例の政治家ネタはまず、麻生太郎さんが文句を言うブルース。私は政治家の方たちの「声」が好きなんです。麻生太郎さん、田中真紀子さん、田中角栄さん……このあたりの方々は「政治家っぽい声」をされていて、その中で麻生太郎さんは「ブルース声」。私がもともとブルースが好きなこともありまして、あの声でトーキングブルースみたいなことをやったらきっと面白いはず、と考えました。ご本人にとってはいい迷惑だと思いますけど(笑)。高市早苗さんの眉毛や石破茂さんも気になっているので、もしかしたら出てくるかもしれません。
それからCreepy Nutsさんと瀬戸内寂聴さんのコラボレーションは新ネタです。Creepy Nutsさんの楽曲は、あれをただ私が熱唱しても誰も笑いませんので、私が瀬戸内寂聴さんになってこの曲を解説する……という余計な親切をすることで面白みが出るかなと。さらにスマホの着信音やコンビニの入店音など、みなさんが知っているメロディをつなげた音楽ネタや、シン岡本太郎さんをゲストにした「徹子の部屋」、お客さんとのゲーム大会も考えているので、楽しんでいただけたらと思っています。
コンプラ違反を恐れてお客さんが笑わない!?
初回は2013年の年末、大きなイベントがキャンセルになり、ピンチヒッターとしてステージに立ったのが最初です。そのときはひとりでは無理だと思って、たくさんの方に手伝ってもらいましたが、糸井重里さんに「よかったけれど、お客さんが見たいのは意外とひとりなんだよ」と言っていただいて。正直私も、「確かに自分が見るときはそうかも」という思いと、「もう少しひとりでやりたかったな」という思いがありましたので、翌年声をかけられてからはひとりでやることにしました。味をしめましたね(笑)。
ありますね。会場に来てくださるお客さまは基本的に、日頃の溜まっているストレスを解消したい、ガス抜きをしたいと思っていますし、武道館公演はお正月ですから、「お正月はカラッと楽しく笑いたい」というのもあると思います。そんなとき、あまり正義感に燃えたことを言っても笑ってもらえないので、私はちょっと皮肉を言うのですが、最近はきついことを言うとみなさんが笑わなくなりました。「コンプライアンス」の前に人種が清く正しく変わってしまったと感じますね。
そうだと思います。「いや、私が犠牲になってるんだから大丈夫、笑って!」と思いますが。そんな私も、過去のネタを見ると「口が悪すぎるよ!」と、自分でゾッとすることはありますので、時代の変化だと思っています。
地方に行ったときは、その地方出身の有名人をネタとして立てることがありますが、それはやっぱりウケますね。それから、今回はコンビニの入店音やLINEの着信音など、「みんなが知っているもの」をネタにしていますが、そういうものはやっぱりウケがいいです。ただ、みんなが知っているものを見つけるのが今は大変で。『紅白歌合戦』ですら、「この方は誰?」ということが起こっていますから。ネタ探しでもあるので、必ず観ることにはしていますが。もっと政治家みたいに、日本中みんなが知っている、みたいな人が出てきてくれたらありがたいですね。
やる気のある人のライブはやる気をもらえる
ヒントになりそうなことは日々気をつけて拾っていますが、ネタを作っている姿はつまらないですよ。パソコンに向かい続ける、地味な作業です。今年も夏は「産みの苦しみ」に悶えていましたが、ネタができないときは本当に怖くなります。
今年は改めて、人のライブを見ることはとても大切だと思いました。人間はすぐに感化されるから、やる気がある人を生で見ると、こちらもやる気がもらえるんですね。日頃から自分を上機嫌にしておいたほうがいい、ということは改めて感じました。
最近印象に残ったライブは、上野の東京国立博物館でやっていた『恐竜大夜行』。これは大音量の音楽の中、夜の公園を20頭くらいの恐竜たちが闊歩するというものでしたが、ものすごく怖いんです。その「怖さ」がエンターテインメントとしてとても刺激で、「これだ!」と思いました。やっぱり人間って怖がりたいんだと思うんです。そんなスリルも必要だなと。私の持ちネタでは……岸田今日子さんの声(のモノマネ)にエコーをかけると、我ながら怖いですよ(笑)。
家族やスタッフに見てもらって、「あまり面白くない」「言いたいことが伝わらない」と言われたら、そのアドバイスを素直に聞くようにしています。というのも、20年くらい前かな、自分ではすごく良いと思って作った『オペラ銭形平次』というのが、まったくウケなかったことがあって。始めてすぐに自分でも「ハズした!」と気がついたのですが、途中で辞めるわけにもいかず……あのときは私も地獄だし、お客さんも地獄だし(笑)。今でもときどきフラッシュバックするくらいの恐怖体験で、大反省でした。そのネタは、私があまりにも精魂込めて準備していたから、スタッフは遠慮して誰も止められなかったみたいなんです。それからは、なるべく周囲に意見を聞くようにしています。そうすることで、ネタとしてのバランスも整いますから。
喉のためには「龍角散」を常備していますね。ボイストレーニングも毎月行っています。歌は、お風呂に入って気楽に歌っていると、我ながらうまいなと思うんですよ(笑)。モノマネも、お風呂ではとても似ているんです。それなのに、急にテレビカメラが入って何万人もの人の前でやりましょうとなると、実力が出ない。だから「誰も見ていない」「自分は一番えらいんだ」みたいな、そんなことを自分に言い聞かせて、ステージでもマイペースでリラックスできるようにしています。健康ももちろん気にしています。視力も落ちてきたし、膝や腰も弱くなっていると感じるので、ジムに行ったり、プールに行ってゆっくり歩いたりということはしています。一回1時間くらいですが、週に2、3回は行っているかな。
衣装は今年も、スタイリストの綿引エイミさんにお願いしています。提案していただいたものの中から「これをメインにして」みたいな感じで一緒に選んでいますね。また、今回のグッズは、若林萌さんという若手のイラストレーターさんのイラストを元にいろいろかわいいグッズをご用意しました。ネタ作りは苦しいときもありますが、やっぱりお客さんと一緒に笑えたときは手応えを感じますし、作ってよかったなと思います。追加公演も発表されましたので、ぜひ『清⽔ミチコ万博 ~ひとりPARADE~』に笑いにきていただけたらと思います。
(取材・文/小川聖子)
(撮影/森浩司)
CAST
清水ミチコ
ゲスト
木村充揮(ex.憂歌団)
U-zhaan(タブラ奏者)
and more…
INFORMATION
- 公演名
- 清水ミチコ万博~ひとりPARADE~
- 会場
- 【東京】LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
- 上演日
- 2025年2月19日(水)
- 料金
- 全席指定 7,000円