今夏の公演に先駆け、4月30日の「日比谷フェスティバル2023」にて、スペシャルパフォーマンスが行われた。ステージには平間壮一、廣野凌大、小南満佑子、山口乃々華、水田航生、美弥るりかの6名が登場。和とロックが入り混じる「祝い唄」、美しいメロディと印象的な歌詞の「月の裏側」、佐之助の葛藤や熱い思いが込められた「マレビトの矜持」が披露された。
パフォーマンス後は新藤晴一も参加。ミュージカルを手掛けることになったきっかけや意気込みを語り、キャスト陣は楽曲に抱いた印象や新藤への質問などトークを繰り広げた。最後に「あんたに聞くよ」というナンバーで締めくくると、会場はa new musical『ヴァグラント』への期待感に包まれた。
ここからは、初めての楽曲披露を終えたばかりの新藤さん、平間さん、美弥さんの3名にインタビュー。
(左から)平間壮一さん、新藤晴一さん、
美弥るりかさん
── まずは、楽曲初披露の感想をお願いします。
平間 緊張しました!
美弥 第一声(1曲目の歌い出し)だったもんね。
新藤 今日みたいなステージで歌うことってあまりないの?
平間 そうですね。完全に役としてではなく、半分くらい平間壮一自身が外に出ているというのは、ちょっと恥ずかしい…。
新藤 なるほどね。
美弥 思った以上にたくさんのお客様が来てくださり、しかも1曲目から結構ノってくださってうれしかったです。この作品を知らない方でも、通りすがりに曲を耳にして興味を持ってくださっていたらいいですね。
新藤 僕はただただ感動するばかりでした。役として歌う声の出し方も知らなかった世界だし、ダンスや振り付けも全然詳しくないし。何より自分の作った曲が皆さんのおかげでステージに上げてもらって、幸せな時間でした。
── 新藤さんはもともとミュージカルを観るのがお好きとのことですが、作り手側になってみていかがですか。
新藤 バンドを始めたのもそうですけど、みんなでワイワイ何かを作るのが好きなんです。今までは板垣さんをはじめとしたスタッフチームでワイワイガヤガヤやってきて、楽しくもあり大変でもあった。でも多分、本当に楽しいのはここから。役者の皆さんと一緒になって、この作品をどうやってステージに上げようかと試行錯誤していくんでしょ?それが本当に楽しみです。
── 平間さんと美弥さんは、これから一緒に作品を作っていくことにどういう思いを持っていますか。
平間 普段携わっている作品の場合、楽曲に対して意見を言ったり変更したりすることは滅多にないんです。でも今回は「もう少し低い音のほうがもっと気持ちが入りそう」というようなところを話し合ったりなど、稽古で一緒に作っていけると思うと楽しみですね。
美弥 最初の頃に仮台本を、その後、ブラッシュアップされたものも読ませていただき、どんどん進化していると感じました。お稽古が始まったら、「もっとこうしたほうがいいかも」とか、晴一さんの中にもキャストの中にもいい意味での欲が出てくると思うので、ワクワクしています。
── ストーリーや役に関して、現時点で感じている印象は?
美弥 私の演じる桃風は、平間君と廣野君が演じる佐之助の姉貴分で、人々を喜ばせる仕事をしています。個人的な印象としては、エンタメを生業としつつも「人は人、自分は自分」というクールな部分も強いと感じました。佐之助が物語の中で成長していく姿を見て桃風も影響を受け、彼女なりに成長していくんだろうなという予感がしています。
平間 内容のことではないんですが、本作をプロデュースしている晴一さんの、ストーリーや本作りに関わる際の過程が気になりました!どのようにしてこの物語にいきついたんですか?
新藤 設定、ストーリー、登場人物、こういうシーンを入れたい、エンディングはこうしたい…と自分なりに結構書き込んで、最初に板垣さんにお会いした時に「晴一さん、これじゃ全然ダメですね」と言われたところから始まったんです。
平間 え〜〜〜!?
新藤 マネージャーたちがざわつくくらいダメ出しされて(笑)。板垣さんって、物語をどう作るか、人間関係をどう作るかとか本当にロジックがある人だから。そこからふたりだけで長時間の打ち合わせを何度も繰り返しました。泊まり込み合宿のようなこともしましたね。
美弥 すごい…!そうだったんですね。
新藤 たくさん話し合う中で、僕がやりたいことを板垣さんがどんどん引き出してくれて。板垣さんは「全部、晴一さんが書いた」と言ってくれるけど、やっぱりきちんと物語にしてくれたのは、完全に板垣さん。
平間 今回の『ヴァグラント』はどういうところから生まれたんですか?
新藤 音楽でも小説でもファンタジーが好きで、ミュージカルでもやっぱりファンタジーがやりたかったんだよね。舞台は大正で、まだ世の中が混沌としている時代。成熟しきっていない世界は、令和の時代から考えるとファンタジーなんだよ。人間関係も、明日に見る夢の大きさも。佐之助というキャラクターを板垣さんに相談した時、「芸能って、この世の中にとって何?」という問いのようなものを僕自身が持っているのではと言われて。確かにそうだし、この物語の裏テーマとしてそれがあるかもしれない。佐之助と桃風は、それを追求する役っていうことなんだよね、きっと。
平間 重要な役どころですね…。僕は役者として、自分自身から生み出せるものってなんだろうと悩んだりするんです。台本も楽曲も誰かに作っていただいたものなので。でも舞台に立つたびに、みんなで作ったひとつの作品ということに自信を持って立たせていただいている。今回は晴一さんの作品の世界に入り込めることがうれしいなぁと思いました。
── 楽曲作りの進行状況はどんな感じでしょう?
新藤 僕のほうはもうほとんどできているよ。
平間 今のところ僕たちがもらっているのは、今日披露した曲だけですね。
新藤 あ、そうなの?美弥さんのパートは大変なことになっているよ。ラップ、できますよね?
美弥 ラップ!?えっ?私…ラップですか!?
新藤 今まさに美弥さんのパートを作っているところ。「桃風ラップ」を予定しているから!
美弥 大変だ…、どうしよう(笑)。
── 楽曲作りの進行状況はどんな感じでしょう?
新藤 僕は、エンターテインメントの可能性を音楽にも小説にも映画にも、そしてミュージカルにも感じています。音楽が好きな人もミュージカルを観に来たらきっと楽しめるし、何だったら僕みたいに自分で作ったっていい。逆に言うと、ミュージカルが好きで劇場に足を運んでいる方も、音楽フェスやライヴブに行ったら絶対楽しいと思うから。今回の作品で、「エンターテインメントって、おもしろいよね」ということを観客の皆さんと語り合いたいですね。
平間 より多くの方に、生のよさを伝えたいと思っています。今って、ボタンひとつで画面の中で観れてしまうものが多いけど、僕自身もやっぱり生って楽しいなと思っているし、それをぜひ体感していただきたいです。ちょっと泥臭くというか、上手いだけがすべてではないという舞台にしたいと意気込んでいます!
美弥 最初にお話をいただいた時から、楽しいことがたくさん詰まった作品だと感じていました。今朝(4月30日)今作のビジュアルが発表されましたけど、それを見た皆さんも楽しみになったのでは。しかもこの作品を明治座でやるというのも新しいなと思います。今日お二人の話を聞いて、ますます期待が高まりました。私自身もこの作品で新しいことにチャレンジしたいです。ラップもやるかもしれませんが…。
新藤 もうできていますからね!
美弥 や、やります!ラップ!なので、ぜひ期待していただいて、劇場にお越しいただければ大変うれしく思います。
(撮影/森 浩司)